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米テック大手 TechCrunch によると、米スタートアップ Clair Health が 2026 年 6 月 17 日付で総額 1,160 万ドル(約 17 億円)の資金調達を発表しました。同社は、女性のホルモンを連続・非侵襲で読み取ることを目指す世界初のウェアラブル「Clair」を開発中で、2026 年 11〜12 月に順次出荷を予定しています。
Apple Watch や Pixel Watch といった既存のスマートウォッチが「ホルモン変動を平滑化されるノイズ」として扱う設計になっているのに対し、Clair はホルモン変動そのものを主役のシグナルとして扱う独自設計を取っています。本記事では、Clair Health の調達内容・技術アプローチ・既存ウェアラブルとの違いを SWL の視点で整理します。
10 個の生体センサーと独自の「生体磁気センサー」
Clair Health の創業者は、いずれもスタンフォード大学卒の Jenny Duan 氏と Abhinav Agarwal 氏のふたり。共同創業者の Duan 氏が、米オレゴン州ポートランドの非営利団体での活動をきっかけに女性の健康分野に関心を持ったことが、Clair の出発点になっています。
「Clair」は手首装着型のウェアラブルで、10 種類の生体センサーを搭載しています。なかでも特徴的なのが、ホルモンの動きを推定するために自社で開発したという 生体磁気センサー(biomagnetic sensor)です。これを含む 10 個のセンサーで 130 種類以上のバイオマーカーを抽出し、エストロゲン・プロゲステロン・LH(黄体形成ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン)・PdG(妊娠検査などで知られる代謝物)といった主要な性ホルモンの動きをリアルタイムに追える設計です。
採血や尿検査が主流だったホルモン測定を、装着しっぱなしのウェアラブル一台で連続化する点が、Clair の最大の特徴です。
$11.6M 調達は Khosla Ventures 主導、23andMe 創業者も参加
今回の調達は、シリコンバレーの著名 VC Khosla Ventures がリードインベスターを務め、a16z speedrun、Brydge Club、Treehub、Cartan Capital、AGI House、Insiders VC、そして遺伝子検査企業 23andMe 創業者の Anne Wojcicki 氏、Stephanie Coleman 氏らがエンジェル投資家として参加しました。
Treehub の投資家 Mary Minno 氏は TechCrunch 宛のコメントで、「ホルモン測定の世界はいまだに採血主体で、私の更年期世代の友人たちもホルモン治療の効果を確認するために血液検査を受け続けている。Clair は本来であれば採血で見ていたはずの情報に光を当てる製品」と評価しています。
音声オンボーディングと、オンデバイス AI で「自分の言葉で症状を伝える」
Clair が技術面で特徴的なのは、ハードウェアだけではありません。同社は 音声ベースのオンボーディングを採用しており、数分の会話だけで、ユーザーがいま月経サイクルのどのフェーズにいるかを独自の音声バイオマーカー AI が判定できると主張しています。
Duan 氏は TechCrunch の取材に対して「これまでの女性向け健康アプリは、特定の症状リストにしか対応できず、ユーザーが感じている症状を十分に伝えきれていなかった。私たちは音声スタックを通じて、自分の言葉で問題を伝えられる手段を提供したい」とコメントしています。
加えて、Clair はプライバシーポリシーとして すべてのモデルをユーザーの手元のスマホ上で動かす「オンデバイスファースト」を掲げており、健康データを外部サーバーに送信・保存・販売しない方針を明文化しています。
Apple Watch / Pixel Watch との違い:ホルモン変動を「ノイズ」にしない
Clair Health は FAQ のなかで、Apple Watch・Oura・Whoop といった既存のフィットネス/リカバリー系ウェアラブルとの違いを明確に主張しています。
同社いわく、既存のスマートウォッチは「ジャイロセンサー」「PPG(光学)センサー」「温度センサー」などを軸にしており、これらの設計では 女性のホルモン変動による生理学的なバラつきを「平滑化すべきノイズ」として扱ってしまうとのこと。たとえば、黄体期に HRV(心拍変動)が 12% 落ち込むのを、フィットネス系アルゴリズムは単純に「回復不足」と解釈してしまう、という指摘です。
これに対して Clair は、最初から 女性のホルモン生理学を主要シグナルとして扱う前提でハードウェア・モデル・データ収集を設計しているとしています。Apple や Google も watchOS 27 / iOS 27 で閉経周辺期の周期記録に対応する など、女性の健康分野を強化していますが、ホルモンの絶対値を非侵襲で連続的に読み取るところまでは踏み込んでいません。Clair はその空白地帯に正面から取りに行く立ち位置です。
競合他社:Oura・Hormona・Level Zero Health との立ち位置の違い
女性の健康・ホルモン領域では、近年さまざまなアプローチのスタートアップが登場しています。TechCrunch も次のような例を挙げています。
・Level Zero Health:連続血糖測定(CGM)に近いデバイスでホルモン推定にチャレンジ
・Hormona:自宅で行う検査キット(在宅検査)を軸に、ホルモンを定点測定
・Ourself Health:ユーザーの手入力ログを AI で解析して女性向けインサイトを提供
これらに対して、Clair は 「装着しっぱなしのウェアラブルで連続・非侵襲」という設計を打ち出した点でユニークです。Oura Ring も Oura Ring 5 で「ホルモン避妊サポート」機能を追加 するなど女性向け機能を強化していますが、こちらはホルモンを直接測定するのではなく、推定モデルでサポートするアプローチです。
料金・出荷予定(日本展開は未発表)
Clair の販売プランは次のとおりです。
・本体価格:369 米ドル(日本円換算で約 6 万円弱)
・月額サブスクリプション「Clair Pro」:9.99 米ドル / 月
・米国の HSA / FSA(医療用積立口座)対象
・Founding Member 枠:本体 20% オフ、Clair Pro 6 か月無料、コミュニティイベント招待、創業チームとのオフィスアワーなどの特典付き。最初の 5,000 枠は完売、現在は最終ロット枠を予約受付中
出荷時期は 2026 年 12 月(Founding Member 向け)を予定。日本での発売や、国内認証への対応については、本稿執筆時点では正式アナウンスはありません。
予約は公式サイト wearclair.com から、出荷までは 100% 返金可能とされています。日本ユーザーの場合は、輸送・サポート・国内認証・電波法・医療機器扱いの可否などが課題になりやすいため、引き続き続報を待ちたいところです。
SWL 編集部の見立て
SWL 視点でこのニュースを整理すると、ポイントは次の 3 点です。
・「フィットネス由来ではない女性向けウェアラブル」がついに本格的な VC マネーを集め始めた。Apple Watch / Pixel Watch / Garmin が苦手としてきた領域(女性のホルモン変動を主役のシグナルとして扱う)に、Clair のようなホルモン特化型プレイヤーが入ってきた構図
・連続・非侵襲のホルモンモニタリングは、これまで採血と尿検査でしか把握できなかった領域。Oura Ring の「ホルモン避妊サポート」のような推定モデル系とは別の、より直接的なアプローチとして注目に値する
・データのオンデバイス処理と Founding Member 制(少量・限定出荷からのスタート)も、近年の女性向けヘルステックの流儀そのまま。Apple や Google が後から同じ領域に踏み込んでくる可能性もあり、ウェアラブル × フェムテック市場は 2026〜2027 年にかけて一段と動きが活発になりそうです
日本市場での展開時期はまだ見えていませんが、フェムテック領域は厚生労働省や経産省も振興に動いている領域。Clair のようなアプローチに国内ユーザーが触れられる日も、そう遠くないかもしれません。続報があり次第 SWL でも追いかけます。
Source: TechCrunch – Two Stanford grads raise $11M to build a noninvasive wearable for hormone tracking / Clair Health 公式サイト
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