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株式会社テックドクターが研究開発分担機関として参画した、慶應義塾大学医学部内科学教室(リウマチ・膠原病)主導の関節リウマチ患者を対象としたウェアラブル研究の成果が、2026年6月に開催された2つの国際学会で発表されました。Fitbit Sense 2で取得した身体活動・睡眠・心拍変動(HRV)などのデータと、患者報告アウトカム(PRO)との関連性を解析し、機械学習でQOLや倦怠感を客観的に推定可能であることを示した内容です。欧州リウマチ学会「EULAR 2026 Congress」ではQOL指標「EQ-5D」との関連性を、国際臨床免疫学会「FOCIS 2026 Annual Meeting」では倦怠感評価指標「FACIT-F」「BFI」との関連性を発表しています。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて実施されました。
事業名は「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業」「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業」、研究開発課題名は「関節リウマチの遠隔診療に向けたIoTデジタルデバイスによる日々の生体データ活用法の確立」。研究開発代表者は慶應義塾大学医学部内科学教室(リウマチ・膠原病) 金子 祐子 教授です。
背景と研究概要
関節リウマチ患者では、関節症状だけでなく、倦怠感・不眠・抑うつなどが日常生活へ影響を与えることが知られています。これらは患者の生活の質(QOL)に直結する重要な症状であり、近年では患者報告アウトカム(PRO)を活用した評価の重要性が高まっています。
一方で、質問票ベースのPRO評価は、患者自身の記憶や回答タイミングに依存するため、日々変動する症状をリアルタイムかつ客観的に把握することが難しいという課題があります。
近年、ウェアラブルデバイスを用いることで、活動量・睡眠・心拍・心拍変動(HRV)などの日常生活下の生体データを継続的に取得できるようになってきました。テックドクターを含む研究グループでは、これまでにもウェアラブル由来データが関節リウマチの疾患活動性と関連することを報告しており、患者状態を反映するデジタルバイオマーカーとしての活用可能性を検討してきました。
本研究では、関節リウマチ患者107名を対象に、リストバンド型ウェアラブル「Fitbit Sense 2」を用いて日常生活下のデータを継続取得しました。取得したウェアラブル由来データと、QOL指標「EQ-5D-5L(EuroQol-5 Dimensions, 5-Level questionnaire;以下EQ-5D)」、倦怠感の評価指標「FACIT-F(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue)」「BFI(Brief Fatigue Inventory)」との関連性を解析するとともに、機械学習を活用することで、患者の主観的状態を客観的データから推定可能かを検証しました。
また、モデル解釈性を高めるためSHAP解析を実施し、患者状態の推定に寄与する主要なウェアラブル特徴量の抽出も行いました。
主な研究成果1|ウェアラブル由来データとQOL指標(EQ-5D)との関連性を確認
欧州リウマチ学会「EULAR 2026 Congress」では、QOL指標「EQ-5D」とウェアラブル由来データとの関連性について発表しました。
解析の結果、EQ-5D効用値は、日中HRV・睡眠時HRV・睡眠中活動量(METs×時間)などと相関を示しました。また、移動能力・日常活動・痛み/不快感などのEQ-5D各項目も、HRV指標と有意な関連を示しました。
さらに、ウェアラブルデータを用いてQOL状態を分類する機械学習モデルを構築したところ、AUC-ROCは0.75〜0.89と高い識別性能を示しました。
SHAP解析では、日中HRVおよび睡眠時間が主要な予測因子として抽出されました。
主な研究成果2|ウェアラブル由来データと倦怠感指標(FACIT-F/BFI)との関連性を確認
国際臨床免疫学会「FOCIS 2026 Annual Meeting」では、同研究における倦怠感関連解析の成果として、倦怠感評価指標「FACIT-F」「BFI」とウェアラブル由来データとの関連性について発表しました。
解析の結果、FACIT-Fスコアは安静時心拍数および夜間HRVと、BFIスコアは日中HRVおよび夜間HRVと相関を示しました。
また、重度倦怠感群と非重度倦怠感群を分類する機械学習モデルを構築したところ、FACIT-Fモデル ROC-AUC 0.88、BFIモデル ROC-AUC 0.82という良好な性能を示しました。
これらの結果から、ウェアラブル由来データが、関節リウマチ患者におけるQOLや倦怠感などの主観的症状を客観的かつ継続的に捉える指標となる可能性が示されました。
社会的意義と今後の展望
本研究成果は、ウェアラブルデバイスによって取得される日常生活下の生体データが、関節リウマチ患者のQOLや倦怠感を客観的かつ継続的に把握するためのデジタルバイオマーカーとして活用できる可能性を示すものです。
従来の質問票評価のみでは把握が難しかった日々の状態変化を、リアルタイムかつ低負荷に把握できるようになることで、患者モニタリングや疾患管理、治療効果評価への応用が期待されます。テックドクターは先に日本人約2,000名のFitbitデータで活動・睡眠・心拍変動の「基準値」を構築・学会発表しており、こうした基準値整備とあわせて、ウェアラブル由来データを臨床に持ち込む基盤が着実に積み上がっています。
テックドクターは今後も、ウェアラブルデータとAI・機械学習を活用したデジタルバイオマーカー研究を推進し、医療現場におけるデータ活用の高度化と、患者中心の医療実現に取り組んでいくとしています。直近では米国臨床腫瘍学会「ASCO 2026」でFitbit活用の早期乳がん研究をポスター発表するなど、Fitbitデータを起点としたデジタルバイオマーカー研究を多方面で進めています。
学会発表概要
| 項目 | EULAR 2026 Congress(欧州リウマチ学会) | FOCIS 2026 Annual Meeting(国際臨床免疫学会) |
|---|---|---|
| 会期 | 2026年6月3日(水)〜6日(土) | 2026年6月9日(火)〜12日(金) |
| 開催地 | ロンドン(英国) | サンフランシスコ(米国) |
| 発表形式 | ポスターツアー「Novel Approaches in Rheumatoid Arthritis」 | ポスター発表 |
| 演題名 | Wearable-derived data and machine learning predict EQ-5D-based quality of life in patients with rheumatoid arthritis | Subjective Fatigue Assessed by FACIT-F and BFI Questionnaires Correlates with Objective Wearable-Derived Data in Patients with Rheumatoid Arthritis |
| 学会WEBサイト | https://congress.eular.org/ | https://focisnet.org/meetings/focis-2026/ |
| 抄録 | annrheumdis-2026-eular.B.2677(Annals of the Rheumatic Diseases Vol.85, Supplement 1, p.S503) | FOCIS 2026 eventscribe |
関連する過去のプレスリリース
・2022年8月9日:医療データ解析SaaS「SelfBase」、関節リウマチに関する慶應義塾大学医学部内科学教室(リウマチ・膠原病)主導のAMED研究において利用開始
・2024年4月11日:テックドクターが携わる慶應義塾大学医学部内科学教室(リウマチ・膠原病)主導のAMED研究の成果が国際学会『ISPOR 2024』に採択されました
デジタルバイオマーカーとは
デジタルバイオマーカーとは、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどから取得される日常的な生体データをもとに、疾患の有無や病状の変化、治療の効果を連続的かつ客観的に評価する指標です。
従来のバイオマーカーは、医療機関で一時的に測定される「点のデータ」でしたが、デジタルバイオマーカーは日常生活の「線のデータ」を継続的に取得できる点が特徴です。運動・睡眠・心拍などの指標をもとに、病気の早期発見や治療モニタリング、さらには薬剤開発における新たなエンドポイントとしても期待されています。海外では2019年頃から開発が進み、国内でも注目が高まっています。スマートウォッチが「測る」から「読み解く」へと向かうAIヘルス新潮流のなかで、デジタルバイオマーカーが実臨床にどこまで浸透していくかは引き続き要注目です。
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