Table of Contents
暗号資産取引所のバイナンス(Binance)から約63.4億ドル相当の暗号資産が盗まれた事件は、偽のHomebrewのインストーラーと偽の採用面接から始まっていました。バイナンスが2026年11月3日に公開した調査報告で、攻撃の流れが明らかになっています。
報告にMacという言葉は出てきませんが、9to5Macのセキュリティ連載「Security Bite」は、公開された手口からMacが入り口だった可能性が高いと伝えています。使われたのは何年も前からある「だまして実行させる」手口で、Macを使う開発者なら誰でも狙われうる内容です。Appleも、AIエージェントのリスクを理由にMacのフルディスクアクセスを厳しくする方針を示しています。
バイナンスの事件は史上最大の暗号資産の盗難
![]()
画像:Unsplash
バイナンスによると、事件が起きたのは2026年10月29日(協定世界時)で、約63.4億ドル相当の暗号資産が被害を受けました。このうち約28.5億ドル分は凍結または差し止めができています。盗まれた分はバイナンスが負担し、利用者には負担させないとしています。被害を受けたトークンの98%はすでに補填しました。
バイナンスは、米連邦捜査局(FBI)が北朝鮮による犯行だとの見方を示していることも報告に書いています。9to5Macは、2025年に起きたBybitの15億ドルの盗難も開発者のMacから始まったと、セキュリティ研究者のクリストファー・ロペス氏が指摘していたことに触れています。
6月に偽のHomebrewのインストーラーで社員の情報が漏れた
攻撃は2段階で進みました。最初は2026年6月です。ウォレットの運用を担当する技術者Aが、AIのコーディングツールを検索エンジンで探し、改ざんされたHomebrewのインストーラーをダウンロードしてしまいました。Homebrewは、Macで開発用のソフトを入れるときに広く使われている無料のツールです。
バイナンスのセキュリティチームはこの異常に気づき、端末を交換して関連する認証情報をすべて切り替えました。ただ、このとき技術者Aの役割と、ウォレットの基盤を担当する同僚たちの情報が攻撃者に知られてしまったといいます。
9to5Macは2025年初めにも、Google検索の上位に表示された偽のHomebrewの広告から、Mac向けの情報窃取マルウェアが広がっていたと報じています。バイナンスは「検索エンジン」で見つけたとしか書いておらず、広告だったかどうかは分かっていません。
9月の偽の採用面接で「課題」として不正なコードを実行させた
次の段階は2026年9月です。ウォレットを担当する別の技術者Bに、正規の求人サイトを通じてプロジェクトの責任者を名乗る人物から連絡が来ました。2回目の面接はチャットアプリで行われ、最後に「課題」としてコードを仕事用のパソコンにダウンロードするよう指示されました。そのコードに不正なプログラムが仕込まれていました。
報告に載っている不正なプログラムの動きには、開発ツールのpyenvを偽物に置き換える処理があり、その中に「/opt/homebrew」というフォルダーが出てきます。これはAppleシリコンを搭載したMacでHomebrewが使う場所で、9to5Macはこの点から、使われていたのはMシリーズのMacBookだった可能性がきわめて高いとみています。
攻撃者は技術者Bのパソコンを乗っ取ったあと、社内のAIツールを使ってほかの技術者のパソコンにも入り込みました。10月20日には、技術者Aのパソコンにコンテナを展開するための権限のトークンがあることを見つけ、10月29日に技術者Cのパソコンからその認証情報を使って攻撃を始めています。
Macの警告だけでは止めにくい「だまして実行させる」手口
9to5Macは、今回の手口はどれも新しいものではないと指摘しています。高額で取引される未知の脆弱性(ゼロデイ)を使ったのではなく、偽のインストーラーと偽の面接という、何年も前から使われてきたやり方でした。
9to5Macによると、macOS 26.4ではターミナルにコマンドを貼り付けるときに警告が出るようになっています。9to5Macはこの警告が役に立った可能性に触れつつも、どうしても入りたい会社の面接課題だと信じている人は、警告が出ても実行してしまうだろうと書いています。開発者が自分で実行すると決めたプログラムを止められる仕組みは、OSにはありません。
Macを使っている人が気をつけたいのは、次の3点です。
・Homebrewなどの開発ツールは、検索結果や広告からではなく公式サイト(brew.sh)から入れる
・面接や仕事の依頼で渡されたコードを、仕事用のパソコンで実行しない
・ターミナルに貼り付けるコマンドの警告が出たら、どこから来たコマンドかを確かめる
史上最大の盗難が、検索と面接という身近な入り口から始まったことは、Macを仕事で使う人すべてにとって他人事ではありません。Macのセキュリティに関するほかの話題は、下の関連記事からたどれます。
あわせて読みたい関連記事
AppleはAIエージェントのリスクを理由に、Macのフルディスクアクセスを厳しくしようとしています。
AppleがMacのフルディスクアクセスを厳しくする|「非常に明示的な操作」でのみ許可へ AIエージェントのリスクが理由
App Storeでは、Appleが2025年に22億ドル以上の不正取引を止めたと発表しています。
Appleが発表、2025年のApp Storeは不正取引22億ドル以上を阻止|アカウント作成11億件・アプリ200万件超を却下
VPNとパスワード管理ツールの違い、説明できますか。
VPNとパスワード管理ツールの違いを説明できた人は世界でほぼ0%|NordVPNのプライバシー調査2026 日本は41点
スマートウォッチの手首の動きからパスワードを推測する手口もあります。
スマートウォッチのセンサーで盗み見される? ハッカーが「手首の動き」からパスワードを推測する手口と対策
Macの記事は、タグページからまとめて読めます。
目的別・記事の見つけ方
「どのスマートウォッチを買えばいい?」「買ったけど使い方が分からない」。そんなときに最初に読んでほしい記事を、目的ごとに選びました。はじめての1台選びから、買ったあとの使い方まで。目的に合わせて読んでほしい記事を選びました。











