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米半導体メーカーMicronの最高ビジネス責任者(CBO)Sumit Sadana氏がThe Wall Street Journalに語った発言の中で、世界的なメモリ不足の遠因としてAppleの強硬な価格交渉があったことを名指しを避けつつ示唆しました。MacRumorsが2026年6月26日付で報じています。発言は、Appleが米国・日本のApple Storeで大規模値上げを発表した数時間後に出たもので、株価は同日6%下落(時価総額約2,650億ドル消失)と、業界・市場の両面で大きく反応しました。
Micron CBOが語った「2023年の業界投資中止」の経緯

Sadana氏はWSJに対し、Micronが過去の業界低迷期に生産能力拡大の投資を行えなかった背景について次のように説明しています。
「価格に対して非常にアグレッシブだったお客様の一部に、当時こう伝えた:『これは建設的とは言えない』と。2023年に業界の投資の多くがシャットダウンされたのは、非常に厳しい価格設定と非常に悪いマージンが原因だった」
Sadana氏は顧客名を明示していないものの、Appleが文脈上の対象として強く示唆されています。Micronは現在もAppleのメモリサプライヤーの1社であり、iPhone・Mac・iPadに搭載されるDRAMおよびNANDフラッシュチップの一部を供給しています。Appleは長期購買契約を通じてMicronなどから有利な条件を引き出す交渉力で知られる買い手です。
Apple Storeの大規模値上げ直後のタイミング
Sadana氏の発言が出たのは、奇しくもAppleがハードウェアラインアップのほぼ全域に及ぶ価格改定を発表した数時間後でした。Mac、iPad、Apple TV、HomePod、Vision Proの各ラインが値上げされ、iPhone・Apple Watch・AirPodsのみが据え置きとなりました。当日のApple株は6%下落、過去1年以上で最悪の単日パフォーマンスとなり、約2,650億ドル(約42兆円・1ドル158円換算)の時価総額が失われたと伝えられています。Apple Storeでの具体的な価格改定の中身は、Appleが米国・日本Apple Storeで一斉値上げを実施|Mac mini 134,800円・MacBook Pro 14インチ339,800円〜、Tim Cookの予告から1週間にまとめています。
Tim Cookは「100年に1度の洪水」と表現
Appleのティム・クックCEOは、値上げ発表に先立つ1週間以上前から同じWSJ紙の取材で、メモリとストレージのコスト圧迫により値上げが避けられない状況になったと警告していました。クック氏は、Appleが「最も深刻な部分は顧客から遮ろうとしてきたが、限界点に達した」と説明。今回のメモリ供給逼迫を「過去40年以上のキャリアで見たことがないような『100年に1度の洪水』」と表現しています。
背景としてクック氏が指摘したのが、AIサーバー向け高帯域メモリ(HBM)需要の急増です。消費者製品向けのメモリ供給が、AI需要によって縮小する供給プールを巡って奪い合う構図になり、価格が落ち着くまでAppleの製品価格も下がりにくいというロジックです。
メモリ価格危機は業界全体に影響:IDC市場予測との符合
このメモリ供給制約の話は、Apple単体の問題に留まりません。市場調査会社IDCも2026年3月時点の世界ウェアラブル市場予測において、「メモリ関連の供給制約が平均販売価格に上昇圧力をかけ続けている」として、2026年の市場成長率を+2.2%へ大幅に減速させる見込みを示しています(詳細は世界ウェアラブル市場2025、出荷+9.1%増の6.115億台に|HUAWEIが世界2位浮上、Xiaomi主導でリストバンド+14.7%増、2026年は+2.2%減速予測【IDC】を参照)。
つまり、Apple/MacRumorsで語られている「メモリ価格危機」は、Apple単体の経営課題ではなく、ウェアラブルを含むコンシューマー電子機器全体に影響している産業全体の構造的な変化として現れています。
製造委託先の多様化:AppleがIntel Foundryに動いた背景にも
Appleが製造側の選択肢を広げようとしている動きとして、海外メディアではIntel Foundryに次世代Mチップ/Aチップの委託を打診したという噂も報じられています(AppleがM7チップをIntel 18A-Pで、A21をIntel 14Aで製造委託か?2027年・2028年量産入りの噂【海外報道】)。TSMCの生産能力ひっ迫とメモリ供給制約は別カテゴリの問題ですが、共通するのは「Appleが特定サプライヤーに依存し続けるリスクを下げにいく」動きです。Micron発言は、その「依存・交渉力」の負の側面を、サプライヤー視点から逆照射した格好とも読めます。
「攻撃的な価格交渉が市場供給を毀損する」というサプライヤー側の論理
サプライヤー視点でSadana氏の発言を整理すると、論点は「短期的な購買コスト最適化が、中長期的に生産能力の不足を招く」という主張に集約されます。2023年にMicronなどのメモリ各社がマージン悪化で投資を絞った結果、その後AI需要が爆発しても増産が間に合わず、結果として2026年現在の供給ショックに繋がっている、という構図です。
もちろんAppleの立場では「サプライヤーから最良の条件を引き出すのは買い手の責務」という反論も成り立ちます。MacRumors記事はAppleが反論したかどうかには触れていません。ただ、Cook CEOが自ら「100年に1度の洪水」と表現するほどの状況になっている以上、サプライヤー側からの「お前にも責任の一端がある」という遠回しの指摘は、Appleにとっても重く受け止めるべきメッセージになりそうです。
まとめ:「値上げ→株価下落→サプライヤーから示唆」の連鎖
2026年6月26日のApple Store値上げ発表から、株価6%下落、Micron CBO発言までが半日のうちに連鎖した形です。Appleの値上げが消費者の不満を呼び、株主の警戒を呼び、そしてサプライヤーからの構造批判まで引き寄せたという、サプライチェーン上のあらゆる関係者が連鎖反応を起こしているのが今回の特徴と言えます。続報や2026年下期のApple新製品発表(M6世代・iPhone 18など)でこの値上げ局面が緩和に向かうかどうかは、今後も引き続きウォッチしていきます。
Source: MacRumors「Micron Suggests Apple Helped Cause Memory Price Crisis」(一部 The Wall Street Journal を引用) / 画像: Photo by Andrey Matveev on Unsplash
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