ティム・クックが最後の日に社員へ送ったメモ|「文化はすべてに勝る」、ジョブズの言葉を引いてターナスへ託した15年【海外ニュース】

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Appleロゴの店舗のイメージ画像。Apple Watchは写っていない。

2026年9月1日、AppleのCEOがティム・クックからジョン・ターナスに代わりました。

その前日にあたる現地時間8月31日、クックはApple社員に向けて1通のメモを送っています。米メディアの9to5Macがそのメモを入手し、全文を公開しました。

15年間の締めくくりに、クックが何を書いたのか。印象的だった部分を追っていきます。

「今日が、CEOとしての最後の日です」

メモは、こう始まります。

「今日が、Apple CEOとしての私の最後の日です。いつか来ると分かっていた瞬間ですが、それでも本当に来てしまったこと、そして自分がこの言葉を書いていることが、まだ信じられません」

そのうえで、社員から寄せられた言葉への感謝と、毎日の働きぶりへの感謝、そして「皆さんのリーダーを務められたという一生分の特権」への感謝を述べています。

CEO交代が発表されたのは2026年4月20日でした。クックはこの夏もCEOとして働き続け、引き継ぎにあたってきたので、この日は4か月以上前から決まっていた日ということになります。

「私の成功と言われるものは、すべて皆さんのおかげ」

メモのなかで、クックは自身の功績を語っていません。かわりにこう書いています。

「私の成功について語られることが何であれ、それはすべて皆さんのおかげだと分かっています。皆さんが、私のなかの最良のものを引き出してくれました。これまでの人生で、これほど並外れたチームと一緒にいたことはありません」

この書き方は、クックらしいと言えばクックらしいところです。退任前のインタビューで「最も誇りに思う製品はApple Watch」と答えたときも、その理由として挙げたのは売上でも台数でもなく、ユーザーから届く「命が救われた」という手紙でした。

「この場所は、文化がすべてに勝るという証明だ」

メモでいちばん強い言葉が置かれているのが、この部分です。

「私が最も誇りに思っているのは、年次報告書には決して書き表せないものです。この場所は、文化があらゆるものに勝るということの証明です」

そして、自分たちがつくるものには意味があり、世界を見つけたときよりも良い場所にする機会と責任がある、という信念を共有していると続けます。さらに、その目的意識はAppleが育てたものではなく、社員一人ひとりが入社するずっと前から持っていたものだと書いています。

15年間で時価総額を大きく伸ばした経営者が、最後のメモで数字にまったく触れず、文化の話だけをしている。ここは読みどころだと思います。

ジョブズの「宇宙にへこみを残す」を引いて

メモの中盤には、スティーブ・ジョブズの言葉が引かれています。

「私たちは、スティーブがかつて表現したように『宇宙にへこみを残す』(dent in the universe)ことを可能にしてきました。それは、私たちが何者であり、何を信じ、何を大切にし、世界をどう見ているかによるものです」

ジョブズからクックへトップが渡ったのが2011年。そこから15年を経て、クックが同じ言葉を使って次に渡す形になりました。

「Appleを去るわけではない。役割を離れるだけ」

クックはメモのなかで、退任後の立場についてもはっきり書いています。

「ご存じのとおり、私はAppleを去るわけではありません。ただ、深く愛してきた役割から離れます。この仕事が恋しくなることは、想像すらつかないほどでしょう。それでも、自分の決断には完全に納得しています」

クックは9月1日付でエグゼクティブ・チェアマン(取締役会会長)に就きます。各国の政策立案者との対話など、一部の役割は引き続き担うとされています。メモの結びも「新しい役割で、Apple Parkや世界各地で皆さんに会えるのを楽しみにしています」となっていました。

ターナスについて「これ以上ないほど楽しみだ」

Appleの新CEOに就任したジョン・ターナスのポートレート

後任のジョン・ターナスについては、こう書いています。

「ジョンのように聡明で、素晴らしく、有能な人物に舵を渡せることに、この上ない安心を覚えています。世界を変える製品をつくるのに何が必要かを、ジョンほど理解している人はほとんどいません。彼のリーダーシップに、これ以上ないほどわくわくしています」

ターナスはハードウェアエンジニアリング担当の上級副社長で、AirPodsを立ち上げ、Apple Watchは全世代に関わってきた人物です。「製品をつくるのに何が必要か」という言い回しは、そのまま彼の経歴を指しています。

SNSにも投稿「肩書きは明日変わるが、この愛は変わらない」

クックはメモとは別に、SNSにも短い投稿をしています。

「CEOとしての最後の日に、Appleコミュニティへ大きな愛を送ります。私の肩書きは明日変わりますが、Appleコミュニティへの愛が変わることはありません。絶えずインスピレーションをくれたことに感謝します。私の感謝は尽きません。そして次の章を楽しみにしています」

まとめ|「着ける会社」になった15年が、ここで一区切りになる

メモ全体を通して、製品名はほとんど出てきません。iPhoneもApple Watchも、具体的な名前としては登場しないまま終わります。書かれているのは、人と文化と信念の話だけです。

それでも、この15年でAppleが何をつくってきたかを振り返ると、意味が違って見えてきます。クックがCEOになった2011年、Appleには体に着ける製品が1つもありませんでした。Apple Watchも、AirPodsも、まだ存在していません。いま多くの人が当たり前に手首と耳に着けているものは、すべてこの15年で生まれています。

その会社を、Apple Watchの全世代に関わってきたエンジニアが引き継ぐ。着ける製品をつくってきた人が、着ける会社のトップになるという交代です。

最初の大きな舞台は、9月9日のスペシャルイベントになります。ターナス体制で最初に世に出るApple Watchが、どんな製品になるのか。答え合わせまで、あと1週間ほどです。

Source: 9to5Mac(メモの全文は同記事に掲載)/画像出典: Apple

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