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2026年9月1日、ティム・クックがAppleのCEOを退きます。後任はハードウェアエンジニアリング担当のジョン・ターナス。クックは会長職に移ります。
その数日前、Xで1本のポストが話題になりました。「2011年にティム・クックがAppleのCEOになったとき、これらは存在しなかった」として、7つの名前を並べたものです。読んでみると、いま私たちが当たり前に使っているものが、ほとんど全部そこに入っていました。
このポストを手がかりに、クックの15年でAppleに何が増えたのかを、スマートウォッチという角度から振り返ってみます。
Xで話題になった「2011年には存在しなかったもの」
話題になったのは、Apple関連の情報を発信している非公式アカウントの、次のポストです。
When Tim Cook became Apple CEO in 2011:
> Apple Watch didn’t exist
> AirPods didn’t exist
> Apple Silicon didn’t exist
> Apple Pay didn’t exist
> Apple Music didn’t exist
> Apple TV+ didn’t exist
> Vision Pro didn’t existNow they’re all part of Apple’s ecosystem
— apple files (@applefiles_) August 29, 2026
挙がっているのは、Apple Watch、AirPods、Apple Silicon、Apple Pay、Apple Music、Apple TV+、Vision Proの7つ。そして「いまではすべてがAppleのエコシステムの一部だ」と結ばれています。
クックがCEOに就任したのは2011年8月。当時のAppleを支えていたのは、iPhone、iPad、Mac、iPodでした。腕にも耳にも、Appleの製品はまだ載っていません。
Apple Watchが出たのは、クック体制の4年目だった
7つのうち、スマートウォッチの世界をいちばん大きく動かしたのはApple Watchです。
発表は2014年9月、発売は2015年4月。クックがCEOになってから3年半ほど経ってからのことでした。ジョブズ体制で企画されていた製品ではなく、クックの体制で立ち上がった最初の新カテゴリーだった、という点がここでは重要です。

そして10年が経ち、Apple Watchは出荷台数でスイス時計業界の全体を上回る「世界最大の時計ブランド」と呼ばれる位置まで来ました。時計をつくったことのなかった会社が、時計の世界で最大手になったわけです。
心拍の異常を知らせる、転倒を検知して緊急通報する、睡眠を記録する。いま私たちがスマートウォッチに期待している機能の多くは、この10年でApple Watchが定着させたものでもあります。
AirPodsが決めた「耳に着けっぱなし」という習慣
AirPodsの発表は2016年9月、発売は同年12月です。イヤホンジャックを廃したiPhone 7と同じタイミングでした。
当時は「うどん」と呼ばれて見た目をからかわれ、失くしそうだと心配され、決して歓迎一色ではありませんでした。それが数年で、完全ワイヤレスイヤホンというジャンルそのものを一般化させています。
Apple WatchとAirPodsが並んだことで、Appleは「手に持つ会社」から「身に着ける会社」になりました。2011年のAppleに、体に着ける製品は1つもなかったのです。
Apple Pay・Apple Music・Apple TV+がつくった、もう一本の柱
残る3つはサービスです。Apple Payは2014年に米国で、日本では2016年に始まりました。Apple Musicは2015年、Apple TV+は2019年の開始です。
ハードウェアを売り切って終わりではなく、毎月お金をいただく事業をつくった。ここはクック体制の性格がよく出ている部分だと思います。実際、Appleのサービス事業はいまや年間1,000億ドルを超える規模に育っています。
スマートウォッチの文脈で見ても、これは他人事ではありません。Apple WatchでSuicaを使うのもApple Payの仕組みですし、走りながら音楽を聴くのも、Apple Watch単体でできることのひとつです。腕の上の体験は、この3つが揃ってはじめて成立しています。
Apple Siliconだけ、投稿者があとから訂正を入れている
面白いのは、このポストに投稿者自身が返信で補足を足していることです。「Apple Silicon(Mシリーズ)」と、わざわざ言い直しています。
理由はおそらく、Appleが自社設計のチップをつくり始めたのはクック就任より前だからでしょう。iPhoneやiPadに載るAシリーズは2010年から使われていました。「Apple Siliconが存在しなかった」と書くと、そこが引っかかります。
Macが自社チップに移ったのは2020年で、これはたしかにクック体制の仕事です。細かい話ですが、投稿者が自分で直しにいったところに好感が持てました。7つのうち1つだけ、他とは成り立ちが違うわけです。
Vision Proは、いちばん新しくていちばん揺れている
7つのうち最後に加わったのがVision Proです。2023年に発表され、2024年に発売されました。
ただ、この製品の現在地はほかの6つとはかなり違います。VR専任チームで60人以上の人員削減があったと報じられ、次期CEOはスマートグラスを優先するとみられています。エコシステムの一部として定着した、と言い切るには早い段階にあります。
もっとも、Apple Watchも出た当初は「何に使うのか分からない」と言われることの多い製品でした。7つを並べたときに、Vision Proだけがまだ答え合わせの途中にいる、というのが正確なところだと思います。
9月1日、クックはCEOを退く
CEO交代が発表されたのは2026年4月20日でした。クックは9月1日付でエグゼクティブ・チェアマン(取締役会会長)に就き、CEOはジョン・ターナスが引き継ぎます。Appleのトップ交代は、2011年にジョブズからクックへ渡されて以来15年ぶりです。
数字で見ると、この15年の変化ははっきりしています。時価総額は就任時の約3,500億ドルから4兆ドル超へ。年間売上高は2011年度の1,080億ドルから、2025年度には4,160億ドルを超えました。
ただ、スマートウォッチという場所から見たクックの15年は、金額よりも「Appleが体に近づいた15年」です。ポケットの中にあった会社が、腕と耳に移ってきた。その変化を起こしたのがこの人でした。
まとめ|次に「存在しなかったもの」を数えるのは誰か
2011年に存在しなかった7つは、いまではどれもAppleの一部です。Apple Watchは時計業界で最大手になり、AirPodsは耳に着けっぱなしという習慣をつくり、サービスは年間1,000億ドルの柱になりました。Vision Proだけが、まだ途中にいます。
そして9月1日から、Appleはジョン・ターナスの体制に移ります。ハードウェアの現場を歩いてきた人で、Apple Watchの開発にも関わってきた人物です。
15年後に同じリストを誰かが書くとき、そこには何が並んでいるでしょうか。差し当たっては、9月9日のスペシャルイベントが新体制の最初のお披露目になります。
Source:apple files(@applefiles_)のポスト
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