サムスンがスウォッチに約18億5,000万円の支払い命令|オメガやブレゲの文字盤を複製したアプリをめぐる商標訴訟、英高裁が判断【海外ニュース】

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青い立体的なSamsungのロゴ。サムスンのウェアラブル新製品に関するニュースのイメージ

スマートウォッチの画面に、オメガやブレゲといったスイスの高級時計そっくりの文字盤を映す。そんなアプリをめぐる争いに、英国の裁判所が金額を付けました。

2026年8月、ロンドンの高等法院は、サムスンに対してスウォッチ グループへ1,160万ドル(約18億5,000万円/1ドル159円換算)を支払うよう命じる判断を下しました。サムスンのスマートウォッチ向けに、オメガ、ブレゲ、ティソといったブランドの文字盤を複製したアプリが配布できる状態になっていたとして、スウォッチ グループが商標をめぐって起こしていた訴訟の判断です。

ウォッチフェイスを好きに着せ替えられることは、いまやスマートウォッチの当たり前の楽しみ方になっています。その当たり前の裏側で何が争われていたのか、そして裁判所が何を重く見たのかを整理します。

請求は1億7,000万ドル、認められたのは1,160万ドル

この訴訟の存在が表に出たのは2026年6月のことでした。スウォッチ グループは当初、1億7,000万ドル(約271億円)の損害賠償を求めていました。

それに対して今回の判決で認められたのは1,160万ドルです。請求額から見れば1割にも届いていませんが、支払い命令が出たこと自体は、スウォッチ グループにとって主張が通った結果になります。判断を下したのはマーカス・スミス判事で、この件はブルームバーグが報じています。

争点になったのは26本のアプリと16万回のダウンロード

手続きの対象になったのは、サムスンのスマートウォッチ向けに提供されていた第三者製のウォッチフェイスアプリ26本です。サムスン自身が作ったものではなく、外部の開発者が作って配信していたアプリでした。

6月19日付の提出書面によると、これらのアプリが生み出した文字盤は、英国とEUで合計およそ16万回ダウンロードされていました。スマートフォンアプリの感覚からすれば決して大きな数字ではありませんが、高級時計ブランド側はこれを看過できない規模と受け止めました。

ティソの最高経営責任者であるシルヴァン・ドラ氏は、当時の証言のなかで、高級時計がスマートウォッチの上に現れることを許すのは「スイスの高級時計の価値を殺す」ことだと述べています。ブランドの評判が傷つけられているという主張が、スウォッチ グループの訴えの中心にありました。

裁判所が重く見たのは「安く手に入ること」だった

判決文のなかで、マーカス・スミス判事はこう述べています。

「スウォッチ グループのブランドが、サムスンのスーパーマーケットの棚に並び、無料あるいはわずかな金額でダウンロードできる状態にあったことは、私の見るところ非常に有害だ」

さらに、こう続けています。

「その安さは、スウォッチ グループが世に広めようとしているブランドの品位を損なうものである」

注目したいのは、裁判所が問題視したのがデザインの模倣そのものだけではなかったという点です。無料または少額で手に入ってしまうこと、つまり価格帯そのものがブランドの価値を毀損すると判断されました。数十万円から数百万円という値段でこそ成り立っているブランドにとって、同じ見た目が数百円で配られる状況は、模倣以上の打撃になるという理屈です。

この感覚は、日本の消費者調査からも読み取れます。「一生もの」として選ばれたのは機械式時計が67.2%、スマートウォッチが32.8%という調査結果があり、値段と所有の重みが結び付いて評価されている実態がうかがえます。

スウォッチ側は「過小評価」、サムスン側は「上訴も検討」

判決を受けて、スウォッチ グループの広報担当者はブルームバーグに対し、「サムスンは、スウォッチ グループの著名ブランドに支払われるべき補償を軽いものに見せることで、侵害の規模と重大性を繰り返し過小評価しようとした」とコメントしています。

一方のサムスンは、訴訟のなかで問題となった文字盤を複製したアプリは、事実を把握した時点ですべて削除したと説明しています。判決についての広報担当者のコメントは、「高等法院の判断を慎重に検討しており、上訴を含むあらゆる対抗措置を検討する」というものでした。

なお、この件を報じたロブ・レポートによれば、サムスンとスウォッチ グループはいずれも同誌の取材に即答していません。

同じ構図の判決は2022年にもあった

実はこれが初めてではありません。数年前にも、文字盤デザインの模倣をめぐってスウォッチ グループがサムスンを訴えた同様の裁判があり、2022年にサムスンの責任が認められています

つまり今回の判決は、一度決着した論点の蒸し返しではなく、同じ構図の争いがふたたび金額の段階まで進んだということになります。スマートウォッチの文字盤という比較的新しい領域について、伝統的な商標のルールをどう当てはめるかという議論が、まだ落ち着いていないことの表れとも言えます。

米国でも同じ訴訟が動いている

仮に上訴が行われなかったとしても、この件はここで終わりません。ロンドンの訴訟と同じ高級ブランド群が、米国の裁判所にも同種の訴訟を起こしており、そちらは現在も係属中です。

英国での判断が米国の裁判所を直接拘束するわけではありませんが、事実関係とブランド側の主張はほぼ重なります。英国で「有害だ」と認定された事実が積み上がったことは、米国の審理にも一定の影響を与える可能性があります。

なぜスイス時計側はここまで強く出るのか

スマートウォッチと機械式時計は、機能で見れば別のものです。それでもスイス時計業界がこれほど神経を尖らせるのには理由があります。

出荷台数という物差しで見ると、すでにアップルはスイス時計全体を上回る「世界最大の時計ブランド」になっています。腕という限られた場所を奪い合う関係にあるなかで、自社ブランドの顔である文字盤が、競合の製品の上で無料配布されている。ブランド側から見れば、単なる著作権の問題ではなく、自分たちの立ち位置そのものに関わる話だったわけです。

ウォッチフェイスを着せ替えて使う私たちへの影響

では、実際にスマートウォッチを使っている側から見て、この判決は何を意味するのでしょうか。

まず、公式ストアで配られる第三者製ウォッチフェイスのうち、実在する時計ブランドの見た目をそのまま写したものは、今後さらに減っていくと考えられます。サムスンはすでに該当アプリを削除したとしており、他のプラットフォームでも同様の対応が広がる可能性があります。「あのブランドそっくりの文字盤」を探す楽しみ方は、公式ストアの中では成立しにくくなっていくでしょう。

一方で、メーカー純正の文字盤や、自分の写真を使ったカスタマイズは今回の話とは別です。誰かのブランド資産を借りずに作られたデザインは、この判決の射程には入りません。実際、個人が作ったカスタム文字盤が海外で話題になる例もあり、着せ替えの文化そのものが否定されたわけではありません。

もうひとつ覚えておきたいのは、非公式のサイトから文字盤ファイルを落として入れるという遊び方が、今後は法的にグレーな領域に近づいていくという点です。プラットフォーム側が削除した以上、外部で配られ続けるものは「消された理由がある」ものだと考えたほうが安全です。

まとめ

ロンドンの高等法院は、サムスンのスマートウォッチ向けにオメガ、ブレゲ、ティソなどの文字盤を複製したアプリが配布されていたことについて、サムスンに1,160万ドルの支払いを命じました。当初の請求額1億7,000万ドルからは大きく減額されたものの、侵害そのものは認められています。

判断の理由として裁判所が挙げたのは、デザインの模倣に加えて「無料または少額で手に入ること」がブランドの品位を損なうという点でした。サムスンは上訴を含めた対抗措置を検討しており、米国でも同種の訴訟が続いています。

私たちの使い方に直結するのは、公式ストアで配られる第三者製の「ブランドそっくり文字盤」が姿を消していくという点です。純正の文字盤や自分の写真を使ったカスタマイズは変わらず楽しめますので、着せ替えという文化そのものを心配する必要はありません。

Source: Robb Report

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