AppleはVision Proをあきらめるのか? VR専任チームで60人以上の人員削減と報道、次期CEOは「スマートグラス優先」【海外ニュース】

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Apple Vision Pro(展示)のイメージ画像。Apple Watchは写っていない。

Appleが2024年に送り出したVision Proは、頭にかぶって使う「空間コンピューター」として大きな話題を集めました。それから2年半、この製品の先行きをうかがわせる報道が出ています。

米AppleInsiderは2026年8月20日(米国東部時間)、独自の情報源の話として、AppleがVR開発を担当していたチームをまるごと人員削減したと伝えました。対象は少なくとも60人。しかも、次期CEOに就任するジョン・ターナス氏がこの分野を「保留(on ice)」にしたという別の報道とも符合する内容です。ここでは何がわかっていて、何がまだ確定していないのかを整理します。

報じられたのは「VR専任チームの解体」

AppleInsiderによると、削減の対象になったのはAppleのVRチーム、同社がVision Products Group(VPG)と呼ぶ部門、およびそれに近いポジションに就いていた少なくとも60人の従業員です。同メディアは当初「VR開発に専念していたチームがひとつ丸ごと解雇された」と報じ、その後の更新で人数の目安を追記しました。

ただし、これはVPGという部門そのものがなくなったという話ではありません。同メディア自身も「Vision Products Groupの終わりを意味するものではない」と明記しています。あくまでVR専任のチームが縮小したという位置づけです。

Vision Proをめぐっては、後継機の登場時期が後ろにずれているという報道が以前からありました。この流れはApple Vision Pro 2、登場は最短2028年か。Bloomberg報道で「先送り」が現実味にでも取り上げています。今回の人員削減は、その延長線上にある動きと見ることができます。

次期CEOのジョン・ターナス氏が優先しているもの

今回の報道でもうひとつ重要なのが、経営体制の変化です。Appleは2026年4月、ティム・クック氏が会長に退き、ジョン・ターナス氏が次期CEOに就くと発表しました。その経緯はApple、15年ぶりのCEO交代へ——ティム・クックが会長に、次期CEOはジョン・ターナスで詳しくまとめています。

AppleInsiderは、そのターナス氏がヘッドセットのカテゴリーを「保留」にしていると報じられている点を挙げ、今回の削減がその方針と一致すると指摘しました。同メディアの見立てでは、いま社内で優先されているのはSiri AIとスマートグラスであり、現時点の技術では現実的に作れないヘッドセットではない、ということになります。

言い換えると、人を減らしたというより、人を別の場所へ移した、という話に近いのかもしれません。実際、ここ数カ月のあいだにAppleの製品グループでは組織の再編が進んでいたと伝えられています。

Vision Proがつまずいた理由

なぜこうなったのか。AppleInsiderが挙げているのは、大きく3つの要素です。

ひとつめは価格です。Vision Proはもともと手を出しにくい価格帯の製品でしたが、部品価格の上昇を受けてさらに値上げされました。Apple製品全体を巻き込んだこの値上げの背景はAppleが米国・日本Apple Storeで一斉値上げを実施|Tim Cook「100年に1度のメモリひっ迫」が背景で整理しています。もともと高かったものが、さらに遠くなった形です。

ふたつめは重さと装着感です。Vision Proは初代からずっと「重い」「長時間は厳しい」と言われ続けてきました。もっと薄く軽く、そして安いモデルを作ろうにも、そのための技術がまだ存在しないか、存在しても高すぎる、というのがAppleInsiderの見方です。

3つめは市場の関心の移動です。いま消費者が近い将来のものとして見ているのは、重いVRヘッドセットではなくスマートグラスのほうだ、と同メディアは書いています。この3つが重なった結果、「開発チームがただ座っているだけ」という状態を避けるための再編が起きた、という説明です。

重心はスマートグラスへ移っている

テーブルに置かれたスマートグラスのイメージ写真。ハンズフリーで周囲の情報を読み取るウェアラブルデバイス

Appleがスマートグラスに力を入れているという話は、今回が初めてではありません。初号機のお披露目は2027年のWWDCではないかという見方が有力で、その内容はアップル初のスマートグラスはWWDC 2027でお披露目か? プライバシー重視でRay-Ban Metaに対抗、カメラ有無も検討中との噂にまとめています。

注目したいのは、AppleInsiderが「スマートグラスもvisionOSで動く」と書いている点です。つまりVision Proは、製品として爆発的に売れることよりも、visionOSというOSを実際の市場で育てるための土台という役割を担っていた、という読み方ができます。その土台がひととおりできたので、次はメガネ、という順番です。

同メディアは以前から、Appleが最終的に目指しているのは本格的なARグラスであり、Vision Proはそこへ至る過程で必要だった製品だと位置づけてきました。今回の削減は、その過程が次の段階に進んだサインとも受け取れます。

それでも「Vision Proの終わり」ではない

ここは誤解されやすいところなので、はっきりさせておきます。AppleInsiderは記事のなかで、今回の報道が「AppleがVision Proを見捨てた」という憶測を呼ぶだろうと予測したうえで、それは事実とは違うようだと書いています。

根拠として挙げられているのが、2026年6月にvisionOS 27が登場したばかりであること、そして将来のモデルに向けた作業がいまも続いていることです。同メディアは「ターナス氏が製品ラインを完全に打ち切るつもりだとは考えにくい」とし、当面はダウンサイジングとスマートグラスへの集中が現実的な選択だと結論づけています。

なお同メディアは、今回の人員削減についてまだ裏付けを取っている情報があり、確認できしだい続報を出すとしています。現時点の内容は匿名の情報源に基づく報道であり、Appleの公式発表ではありません。

スマートウォッチを使っている人にとっての意味

少し引いて眺めると、この話はヘッドセットだけの問題ではありません。ウェアラブル全体で、重心がどこへ動いているかを示す出来事です。

市場予測を見ても、この数年でスマートグラスの存在感が大きくなると見られています。2032年までの累計市場価値でアイウェアが全体の5分の1近くを占めるという試算はウェアラブルの売上は2026〜2032年で1兆ドル超へ|台数は年6%でも金額は年12%、スマートグラスが2032年に全体の5分の1で紹介しました。手首の次にメーカーが狙っているのは、顔まわりだということです。

とはいえ、これは「Apple Watchの時代が終わる」という話ではありません。Appleのウェアラブル部門はここ2四半期プラスで推移しており、手首のデバイスは依然として同社の健康戦略の中心にあります。いま使っているスマートウォッチを慌てて買い替える理由も、今回の報道からは出てきません。数年後の選択肢が少し増えるかもしれない、という程度に受け止めておけば十分です。

現時点でわかっていること

今回の報道を整理すると、次のようになります。

項目 内容
情報源 AppleInsiderの独自取材(2026年8月20日 米国東部時間・匿名の情報源)
削減の規模 少なくとも60人。VR専任チームがまるごと対象になったとされる
対象部門 AppleのVRチーム、Vision Products Group(VPG)および近い職種
部門の存続 VPGそのものが解散したわけではないと報じられている
経営側の方針 次期CEOのジョン・ターナス氏がヘッドセット分野を「保留」にしたとの報道
優先されている領域 Siri AIとスマートグラス
背景にある課題 高価格(部品価格上昇による値上げ)、重量と装着感、消費者の関心がスマートグラスへ移動
Vision Proの今後 2026年6月にvisionOS 27が登場。将来のモデルの開発も継続中とされる
公式発表の有無 なし。Appleからのコメントは出ていない

まとめ

今回わかったのは、匿名の情報源による人員削減の話と、それを既存の報道と重ね合わせた読み解きです。Appleが公式に何かを発表したわけではなく、Vision Proの生産終了が決まったわけでもありません。

それでも、部品価格の上昇で値上げが続き、軽くて安いモデルを作る技術がまだ整わず、消費者の目線はスマートグラスへ向かっている——という条件が並ぶと、開発の重心が動くこと自体は理解しやすい話です。visionOSという土台は残り、その上で動く次の製品がメガネになる。今回の報道は、その転換点を外から垣間見たものと言えるかもしれません。

続報が入りしだい、あらためてお伝えします。

Source: AppleInsider

画像: Unsplash(イメージ写真)

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