ウェアラブルの売上は2026〜2032年で1兆ドル超へ|台数は年6%でも金額は年12%、スマートグラスが2032年に全体の5分の1【調査レポート】

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Counterpoint Researchによる、ウェアラブル各カテゴリーの2026〜2032年の累計市場価値を人体イラストに配置した図。ヒアラブル3,600億ドル、スマートウォッチ3,040億ドル、アイウェア1,680億ドル、ヘルスパッチ1,200億ドル、スマートリング440億ドルなどが示されている

スマートウォッチが売れなくなった、という話をここ最近よく見かけます。実際、出荷台数の伸びは以前ほどではありません。

しかし、台数と金額は別の指標です。調査会社のCounterpoint Researchが2026年8月19日に公開した見通しによると、身につけるデバイス全体の売上は2026年から2032年までの7年間で、累計1兆ドル(およそ155兆円)を超えるといいます。台数が横ばいでも、1台あたりの価格が上がっていくためです。

台数は年6%、金額は年12%で伸びる

今回の数字は、同社の「Global Consumer IoT Wearables Tracker 2024-2032F」に基づくものです。

注目したいのは、伸び方の差です。出荷台数の年平均成長率が6%であるのに対し、売上は12%。ちょうど倍のペースで金額が増えていく計算になります。同じ数だけ売れても、より高価な製品が選ばれるようになる、という見立てです。

同社のプリンシパルアナリスト、Anshika Jain氏はこう述べています。ウェアラブル市場は価値主導のフェーズに入りつつあり、購入者は継続的な健康モニタリングができる機器へと買い上がっている。用途はフィットネスを越えて予防医療へ移りつつあり、本人が気づく前に異変を知らせてくれる製品になってきた。それこそが、ウェアラブルを単なるアクセサリーから定期的に買い替えるものへ変えるのだ、と。

直近の四半期でも、出荷台数は全体で2%減となる一方でスマートウォッチだけは6%増という結果が出ています。台数だけを見ていると市場の縮小に見えますが、金額で見ると景色が変わるわけです。

カテゴリー別の内訳。最大はヒアラブル、次がスマートウォッチ

Counterpoint Researchによる、ウェアラブル各カテゴリーの2026〜2032年の累計市場価値を人体イラストに配置した図。ヒアラブル3,600億ドル、スマートウォッチ3,040億ドル、アイウェア1,680億ドル、ヘルスパッチ1,200億ドル、スマートリング440億ドルなどが示されている

2026〜2032年の累計市場価値(画像:Counterpoint Research)

公開された図では、体のどの部分につけるデバイスがどれだけの市場になるかが示されています。金額はいずれも2026年から2032年までの累計です。

カテゴリー 累計市場価値(2026〜2032年)
ヒアラブル(TWS・スマート補聴器) 3,600億ドル(約56兆円)
スマートウォッチ 3,040億ドル(約47兆円)
アイウェア(ARグラス・スマートグラス) 1,680億ドル(約26兆円)
ヘルスパッチ 1,200億ドル(約19兆円)
スマートリング 440億ドル(約6.8兆円)
ペンダント 240億ドル(約3.7兆円)
その他のウェアラブル 240億ドル(約3.7兆円)
スマートシューズ 180億ドル(約2.8兆円)
フィットネスバンド(画面なしバンド) 140億ドル(約2.2兆円)
スマートソックス 70億ドル(約1.1兆円)
スマートウェア 30億ドル(約4,700億円)
スマートベルト 10億ドル(約1,550億円)

腕につけるスマートウォッチと、耳につけるヒアラブルの2つで、全体の6割以上を占めます。一方で、貼るタイプのヘルスパッチが1,200億ドルと3番目の規模になっている点は、健康計測が体のあちこちに広がっていく流れを表しています。

なお、ここでいう「消費者向けウェアラブル」はAI搭載製品だけを指すのではなく、身につけて使うセンサー内蔵の接続機器全般を指す、と同社は注記しています。画面を持たないシンプルなバンドのように、派手さはなくても着けっぱなしにできる製品も、この枠の中に入っています。

スマートウォッチとTWSで5,580億ドル

カテゴリー別に見ると、今後もスマートウォッチとTWSイヤホンが最大勢力であり続けます。この2つを合わせた累計売上は5,580億ドル(およそ86兆円)と見込まれています。

理由として挙げられているのは、すでに大きな利用者基盤があること、買い替え需要が発生すること、健康・通信・娯楽と日常のあらゆる場面で使われること、そしてスマートフォンとの連携が深いことです。

ただし、この2つは中身が違います。スマートウォッチは、高級な筐体、セルラー通信、高度な健康センサー、端末内で動くAIによって平均単価が上がり、予防医療と個人向けコンピューティングの土台へと広がっていくと予想されています。

対してTWSは、機能が横並びになり価格競争が起きているため、金額面での成長は抑えられるとされています。同じ「最大カテゴリー」でも、進む方向は分かれていきそうです。

最も伸びるのはスマートグラス、続いてリングとペンダント

成長率でいちばん高いのは、スマートアイウェア、AIペンダント、スマートリングの3つです。

スマートアイウェアの売上は、2032年には単年で440億ドルに達し、ウェアラブル全体の5分の1近くを占めると見込まれています。カメラ、マイク、スピーカー、ディスプレイを備えることで、通話や翻訳、ナビゲーション、その場での支援が、スマートフォンを取り出さずに行えるようになるためです。

同社は、ディスプレイを持たないAIグラスと、ARディスプレイ付きグラスの役割を分けて見ています。前者は見慣れた眼鏡のデザインと安い価格、カメラと音声を軸にした使い方で数量を伸ばし、後者は仕事や移動、訓練、娯楽での映像重ね合わせによって高い単価を取る。両方が揃うことで裾野が広がる、という読みです。

Appleが健康分野を軸にスマートグラスへ再挑戦しているとの報道もあり、この分野は今後さらに顔ぶれが増えそうです。

スマートリングとAIペンダントについては、目立たない形状、常時使える支援機能、正確なセンシングが評価されています。ペンダントは規模が小さいところからの出発である点も、あわせて注記されています。腕以外の場所で体を測るという発想は、Garminが初のスマートリングを準備しているとされる動きにも通じます。

オンデバイスAIは「熱とバッテリーの問題」

興味深いのは、半導体側から見た指摘です。

同社のリサーチディレクター、Mohit Agrawal氏は、ウェアラブルにおける端末内AIは、ソフトウェアの問題である前に熱とバッテリーの問題だと述べています。デバイスは肌に接した状態で、絶えずセンサーを動かし、それでも1日は動き続けなければならない。生の処理性能ではなく、その制約こそが今後数年でチップメーカーの明暗を分ける、という見方です。

腕時計型のデバイスを使っていると、電池持ちと発熱がいかに体感を左右するかは実感するところです。高性能なAIを載せるほど、この制約は厳しくなっていきます。

競争の軸は、スペックからエコシステムへ

最後に同社は、競争優位が個々の製品スペックから、エコシステムをどう握るかへ移っていくと指摘しています。

ハードウェアに加えて、他社製品ともつながるソフトウェア、信頼できるデータの取り扱い、開発者が集まる環境、業界内での提携。これらを整えられたメーカーが、顧客と長い関係を築き、継続的な収益を得られるようになる、という見立てです。

腕元のデバイスを選ぶとき、私たちが実際に比べているのは、センサーの数よりも「どのスマートフォンと合うか」「データがどこに貯まるか」だったりします。その感覚は、市場の見通しとも一致しているようです。

まとめ

台数の伸びが鈍っても、市場としては年12%で拡大していく。今回の見通しが示しているのは、そういう構図です。

背景にあるのは、ウェアラブルが体調の異変を先に見つける道具になりつつあること。そうなれば、多少高くても買い替える理由が生まれます。

出荷台数ベースでは減少が見込まれているのに、金額では過去最大規模になっていく。同じ市場を見ていても、どの物差しを当てるかで結論が変わります。数字を目にしたときは、それが台数の話なのか金額の話なのかを確かめておきたいところです。

Source: Counterpoint Research
画像:Counterpoint Research

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