iCloudプライベートリレーは約束どおり守っていなかったのか? Appleに集団訴訟の申し立て、抜け道はパスキーの対応確認【海外ニュース】

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青い背景に大小2台のDynamic Island世代のiPhone Proを並べ、同じホーム画面を表示している

Appleの「iCloud+」に含まれるプライバシー機能「iCloudプライベートリレー」をめぐって、米国で集団訴訟の申し立てが行われた。カリフォルニア州の男性が現地時間8月6日、「IPアドレスを隠すという約束が守られていなかった」として、Appleを虚偽広告・不実表示・詐欺で訴えたものだ。

追加料金を払う理由として案内されてきた機能に穴があった、という主張である。この記事では、訴えの中身と、その根拠になったセキュリティ研究、そして今の利用者がどう受け止めればいいのかを整理する。

何が起きたのか

訴えを起こしたのは、カリフォルニア州に住むEdward Rickman氏。訴訟は「Rickman v. Apple Inc.」として、米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所(サンノゼ)に提出された。

訴状は、Appleが実際に提供している以上のプライバシー保護を約束することで利用者をあざむいたと主張している。焦点になっているのは、プライベートリレーの「二重リレー」という設計だ。通信を2つの中継地点に分けて通すことで、どちらか一方の当事者が「利用者が誰か」と「どこに接続しているか」の両方を知ることは構造的に不可能になる——Appleはそう説明してきた。訴状はこの説明について「一度も真実ではなかった」と述べている。

なお、これは集団訴訟として認めてほしいという申し立ての段階で、まだ集団訴訟として認定されたわけではない。Appleはこの申し立てに対して回答していない。

プライベートリレーは、何を約束していた機能なのか

プライベートリレーは、iCloudの有料プラン「iCloud+」に含まれる機能だ。Safariでウェブを見るときに、通信を2段階の中継サーバー経由にすることで、接続先のサイトに本当のIPアドレスを知られないようにする、という仕組みになっている。

ポイントは、これがストレージ容量とは別に案内されてきた「払う理由」だという点だ。iCloud+の契約者は、単に保存できる容量を買っていたわけではない。追跡されにくくなるという説明があったからこそ、上のプランを選んだ人もいる。訴状が問題にしているのはそこで、「機能していなかったのだから、契約者は約束されたものより少ないものしか受け取っておらず、払いすぎていた」と主張している。

iCloud+は2026年7月に日本を含む8カ国で約20%値上げされたばかりでもある。払っている金額が上がった直後にこの話が出てきた、という受け止め方をする人もいるだろう。

抜け道になったのは、パスキーの対応確認だった

今回の訴訟の下敷きになっているのは、先ごろ公開されたセキュリティ研究だ。研究者らは、プライベートリレーの保護がパスキーの対応確認をきっかけに回避されうると報告した。

仕組みはこうだ。訪れたサイトがパスキーに対応しているかどうかを端末が確認する際、その通信がブラウザの外側から出ていく。プライベートリレーはSafariの通信を守る機能なので、ブラウザの外を通った通信は保護の対象にならず、そこから実際のIPアドレスが表に出てしまう、というものだ。

やっかいなのは、サイトが本当にパスキーに対応している必要すらないとされている点だ。対応しているように見せかけるだけで、この確認動作を引き起こせるという。

研究者らは同時に、DNSプリフェッチ(先読み)とWebTransport接続にまつわる2件の問題も公表している。いずれもプライベートリレーが有効な状態でも情報が外に出うる、という内容だ。

訴えたのは、Siri AIの訴訟で2億5,000万ドルを引き出した事務所

今回の訴訟を担当しているのは、Clarkson Law Firmという法律事務所だ。ここは、遅れているSiri AIの機能をめぐってAppleを訴え、2億5,000万ドルの和解を成立させた事務所でもある。

Appleに対する集団訴訟の申し立て自体は珍しいものではなく、すべてが実を結ぶわけでもない。ただ、プライバシーはAppleが長年ブランドの中心に据えてきたテーマだ。ティム・クック氏がプライバシーを「基本的人権」と表現したこともある。約束が守られていないという訴えは、他の係争より企業イメージの芯に近いところを突いている。

いま、利用者は何をすればいいのか

現時点で、利用者側の設定でこの抜け道をふさぐ確実な手段は示されていない。プライベートリレーをオフにしても状況が良くなるわけではないので、慌てて切る必要はない。

現実的にできるのは、iOSとmacOSのアップデートが出たら早めに適用することだ。訴訟の行方にかかわらず、Appleは今後のアップデートでプライベートリレーとWebKitまわりの問題を修正するとみられている。

もうひとつは、期待値の置き方を調整しておくことだろう。プライベートリレーはSafariの閲覧に対して働く機能で、VPNのように端末の全通信を包み込むものではない。この線引きを知っておくと、「何が守られていて、何が守られていないのか」を取り違えずに済む。健康や位置情報のように、より慎重に扱いたいデータについては、どのメーカーがどこまで暗号化しているのかを調べた記事もあわせて読んでおくと判断しやすい。

まとめ

iCloud+のプライベートリレーについて、「IPアドレスを隠すという約束が果たされていなかった」とする集団訴訟の申し立てが米国で行われた。根拠になっているのは、パスキーの対応確認を通じて保護を回避できるというセキュリティ研究で、DNSプリフェッチとWebTransportに関する問題も同時に指摘されている。

Appleはまだ回答しておらず、集団訴訟として認定されるかどうかもこれからだ。利用者としては、結論を待つよりも、アップデートが出たら適用することと、この機能がどこまでを守るものなのかを把握しておくことのほうが実利がある。

Source: Cult of Mac

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