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【海外DIY】ソーラー+E-InkでESP32スマートウォッチを9か月動かす個人プロジェクト「LightInk」が話題に

コラム・業界分析

公開日: 最終更新日:

LightInk スマートウォッチの完成版。E Inkディスプレイに「14:40 SAT 13 SEP 2025」と、月齢・日の出日の入り時間を表示。右にソーラーセル、下部にUSB-Cポート。

「90年代のソーラー充電式デジタル時計のように、電池交換なしでいつまでも動き続けるスマートウォッチを自作したい」。そんな思いから生まれた、個人開発のE-Inkスマートウォッチ「LightInk」が話題になっています。ハードウェアハッカー向けのコミュニティサイト・Hackaday.ioに投稿されているプロジェクトで、海外メディアのHackaday.ioによると、ESP32の起動方法そのものを工夫することで、ソーラーパネルと小さなバッテリーだけで最大9か月の連続稼働を実現したとのことです。一般的な市販スマートウォッチが数日〜数週間で充電を必要とする中、桁違いの稼働時間を狙う意欲的な取り組みになっています。

Source:LightInk – Hackaday.io

「ソーラーで永久に動くスマートウォッチ」を目指した個人プロジェクト

LightInk スマートウォッチのバリエーションを5本並べた様子。黒タイプモデルと白タイプモデルを含む複数世代のプロトタイプ。
LightInkプロジェクトの複数世代プロトタイプ。ソーラーパネルとE Inkディスプレイが共通。

LightInkは、Daniel Ansorregui氏が2019年から取り組んでいる個人プロジェクトです。プロジェクト名は「Light-weight(軽量)」と「Light powered(光で動く)」のE-Inkという2つの意味を込めたものとされています。

もともとは、自宅の受信機にLoRaパケットで通信できるソーラーウォッチを作るというアイデアからスタートし、初期はHeltec Wireless stick liteと外付けE-Inkディスプレイで試作していたとのこと。その後、開発者向けのオープンソースE-Inkウォッチとして知られる「Watchy」を見つけて購入したものの、「すっきりしたデザイン・LoRa対応・ソーラー充電」という自分の理想にはまだ足りないと感じ、ベースとして活用しながら独自設計のハードウェアを作る方向に進んだといいます。

Watchyにソーラーパネルを組み合わせる実験では、稼働期間は40日ほどが限界だったとのこと。そこから、低消費電力のDC-DCコンバータ「TPS63900」(待機電流75nAクラス)を中心に据えた、完全に独自設計のPCBを起こす方向へと進化していきました。

主な仕様とハードウェア構成

LightInk スマートウォッチの内部を分解した様子。GPSモジュール、コイルアンテナ、リチウムポリマー電池、基板などが見える。
LightInkの内部構造。電気仕様とコンポーネント配置。

LightInkは、いわゆる完成品の製品ではなく、PCB・ケース・ファームウェアすべてを自分で用意するDIYプロジェクトです。Hackaday.ioのプロジェクトページに掲載されている主要パーツは次のような構成になっています。

項目 内容
メインMCU ESP32 PicoD4(Wi-Fi/Bluetooth対応)
ディスプレイ 1.54インチ E-Ink(200×200ピクセル・モノクロ)
通信 Wi-Fi/Bluetooth/LoRa(Wio-SX1262)/GPS
電源管理 TPS63900 低消費電流DC-DCコンバータ
操作系 ESP32内蔵のタッチ機能を活用したタッチボタン
その他 ピエゾスピーカー、円形バイブモーター、ソーラーパネル
バッテリー 100mAhクラスの小型セル

面白いのが、ボタンの代わりにESP32のタッチセンサ機能を使っている点です。物理ボタン用の穴やスペースを省けるため、ケースを小さくでき、防水・防塵の観点でもプラスに働きやすい構造になっています。本人もWatchyのボタンを扱うのに苦労した経験から、タッチ式に切り替えたと振り返っています。

9か月稼働の鍵は「フラッシュ起動をスキップする」アイデア

このプロジェクトでもっとも特徴的なのが、消費電力を削るためのESP32の起動シーケンスへの踏み込みです。E-Inkウォッチでは、1分に1回など定期的に画面を更新するため、ESP32が短時間スリープから起き上がるたびに電力を消費します。Daniel氏が計測したところ、ディスプレイの更新そのものよりも「フラッシュからESP32がブートする28ms」にこそ多くの電力が使われており、全体の約60%を占めていたとのことです。

そこで採用したのが、ESP32の「Wakeup Stub」と呼ばれる仕組みです。RTCメモリ上に置いた関数を起動直後に呼び出すことで、フラッシュからの読み出しを行わずにマイコンを動かせるテクニックですが、利用には大きな制約があります。Arduinoライブラリなどの通常のコードはRTCメモリ上で動かせないため、ディスプレイのSPI通信などをすべて低レベルから書き直す必要があったといいます。

Daniel氏はこの再実装に数か月をかけ、SPI通信と部分的なE-Ink更新処理をRTC内コードとして書き起こすことで、ブートから画面更新までを1ms以下に短縮。さらに画面の物理的な更新待ち時間中はESP32をディープスリープに戻すことで、ライトスリープ時の1mAの消費も削っています。これらの工夫の結果、起動部分の電力消費は劇的に下がり、上の通り「100mAhバッテリー+ソーラー」で約9か月稼働するところまで到達したとのことです。

2.7V駆動・タッチ操作・LoRa搭載のユニークな1台

LightInkは省電力以外にも、いわゆる「自作だからこそできる」とがった選択がいくつも盛り込まれています。電源電圧は2.7Vでの駆動を採用しており、ESP32もE-Inkパネルもこの電圧で十分動作することを実機で確認したうえで、Watchyに比べて待機時の電池持ちが約2倍(2か月)、ソーラーを加味すると合計3か月程度になるなど、本体だけでも省電力の効果が大きいといいます。

また、もともと作りたかったLoRa通信も搭載済みで、自宅の受信機との連携を想定。GPSも一度搭載したものの「あまりよい選択ではなかった」と本人がコメントしており、機能の取捨選択を試行錯誤している様子もうかがえます。タッチ操作・LoRa・ソーラーといった要素は、市販のスマートウォッチではほぼ見かけない組み合わせで、コミュニティ発のプロジェクトならではのユニークさが感じられます。

オープンソースで公開、ハッカソンにもエントリー

LightInkのソースコード、PCBデータ、3Dプリント用のケースデータは、すべてGitHub上で公開されています。同プロジェクトは「Green Powered Challenge」と呼ばれる、再生可能エネルギーで動くガジェットを競うハッカソン的なコンテストにもエントリーしており、すでに50人以上がフォローし、コメントでも改良案やフィードバックが寄せられています。

「Pebbleが復活したけれど、自分の好みの電池持ちには遠い」「カシオのように10年動く時計が、もっと自由にプログラムできれば」といったコメントに対し、Daniel氏は「STM32にすればもっと省電力にできたかもしれないが、ESP32でWi-Fi・Bluetooth付きでもここまで持つかというチャレンジでもある」と回答しており、選択の意図も丁寧に語っています。

プロジェクトページ:LightInk – Hackaday.io
ソースコード:DarkZeros/LightInk – GitHub

まとめ|「電池を気にしないスマートウォッチ」の可能性を感じる試み

市販のスマートウォッチは年々高機能になる一方で、毎日や数日ごとの充電が前提という現実は、なかなか変わっていません。そんな中でLightInkは、ESP32という汎用マイコンと小さなE-Inkパネル、そしてソーラーセルだけで「半年以上動くスマートウォッチ」を目指すというアプローチを示してくれます。

もちろん、現時点では一般ユーザーが買って使える製品ではなく、PCB発注・組み立て・ファームウェア書き込みといった作業が必要なDIYプロジェクトです。ただ、Watchyのようなオープンソースのスマートウォッチから派生し、消費電力削減のノウハウやコードが公開されていくこと自体が、将来の「電池を気にしないスマートウォッチ」につながっていく可能性を感じさせます。Smart Watch Lifeでも、こうした個人発の意欲的なプロジェクトの動向については引き続き注目していきたいところです。

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