プロのライターとして取材・対談の現場でAIボイスレコーダーを使い続けていると、どうしても気になるのが「サービスによって文字起こしの仕上がりがどれだけ違うか」という点です。スペック表を見比べても、実際の取材現場で役立つかどうかはやってみないと分からない。そこで今回は、実際の取材音源を使って3つのAIボイスレコーダーサービスの文字起こし精度を比較検証しました。
比較対象は「Soundcore Work」「Plaud Note Pro」「Notta Memo」の3つです。それぞれ実際の対談・インタビュー取材の現場で録音し、文字起こしの精度や使い勝手を複数の観点から確認しています。
比較する3つのAIボイスレコーダー
Soundcore Work(Anker)

Ankerが手がける指先サイズのAIボイスレコーダー。マグネットで衣服やマイクスタンドに貼り付けられる設計が特徴で、目立たず取材現場に溶け込めます。150以上の言語に対応したAI文字起こし機能を搭載し、録音データはSoundcoreアプリで管理します。
詳しいレビューはこちら:Anker「Soundcore Work」レビュー|指先サイズで本当に使えるAIボイスレコーダーか、取材で試した
Plaud Note Pro

カード型の薄型ボディが特徴のAIボイスレコーダー。話者識別(ダイアライゼーション)の精度が高く、対談や座談会などの複数話者が入り乱れる現場でも発言者を正確に追跡します。ZoomやGoogle MeetなどのPC会議音声を直接取り込める機能も持ちます。
詳しいレビューはこちら:Plaud Note Proレビュー|プロのライターが実感した「文字起こし精度の進化」と”仕事で使える”AI議事録の現実
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Notta Memo

AIボイスレコーダーのハードウェアとクラウド文字起こしサービスを組み合わせたシステム。文字起こし結果をそのまま読み物として使えるレベルに整理してくれる点が最大の特徴で、フィラー(言い淀み)の自動除去やAI要約の自動生成機能も備えています。
詳しいレビューはこちら:AIボイスレコーダー「Notta Memo」を取材・対談・電車内までガチ検証。文字起こし外注はもう不要かも?
検証の前提条件と環境
今回の比較に使用した音源と環境は以下のとおりです。
・使用した音源:実際の対談・インタビュー取材音源 複数本(各1〜2時間程度)。テーマは芸能・サブカルチャーなど多岐にわたります。
・録音環境:比較的静かなカフェや室内。
・話者の人数:メインスピーカーは2〜3人。現場スタッフや同席者の声が不規則に混入したり、笑い声や相槌が重なるなど、AIにとって現実的に過酷な環境です。
・比較の視点:話者識別の精度、テキストの読みやすさ、固有名詞・専門用語の変換精度、フィラー処理の方針、それぞれが持つ独自の強みの5つを軸に評価しています。
あらかじめ総評をお伝えすると、文字起こし結果のすぐ使えるレベルで言えばNotta Memoが最も優れており、話者識別の安定性ではPlaud Note Proが頭ひとつ抜けています。Soundcore Workはこの2つと同水準の文字起こし精度を持ちながら、マグネット装着によるコンパクトさとコスパを強みに持つ選択肢というのが率直な結論です。
比較1:話者識別(ダイアライゼーション)の精度 勝者:Plaud Note Pro

複数人の対談において、「誰がいつ発言したか」を正確に追跡する話者識別の能力で最も安定していたのはPlaud Note Proでした。
Soundcore WorkとPlaud Note Proの話者識別
Soundcore WorkとPlaud Note Proはいずれも、話者の名前を付けたラベルで発言者を区別してテキストを出力します。会話のテンポが速い場面や相手の言葉に被せるような発言でも、両者とも比較的正確に発言のターンを切り分けてタイムスタンプとともに出力していました。
ただし細かく見ると、Plaud Note Proのほうが録音全体を通じた話者の追跡が一貫しており、誰の発言かが途中で入れ替わるといった混乱は最小限でした。Soundcore Workも全体的に安定していましたが、話者ラベルと実際の発言者が入れ替わるケースが散見されました。
Notta Memoの話者識別の弱点
対するNotta Memoは、長時間の録音になると同じ話者を途中で別人として分割してしまう(過剰分割)傾向が見られました。「話者1」「話者2」といった汎用的な番号ラベルで識別されるため、後から音源を聞き直して手動で名寄せする手間が発生します。また、ある話者の長い発言の中に別の話者の短い相槌が取り込まれてしまう「統合ミス」も見られ、対談の主を後から分離する作業が必要になることがありました。
比較2:テキストの読みやすさと段落のまとまり 勝者:Notta Memo

Notta Memoの文字起こし画面。会話が整理されていて読みやすい
文字起こし結果をそのまま「読み物」として使えるかどうか。この観点ではNotta Memoが圧倒的に優れています。
Notta Memoの整理された出力
Notta Memoは、発言者の意図や話題の流れをある程度理解した上で、自然な段落の塊として出力してくれます。ある話者が過去の経緯や考えを数分間にわたって話すシーンでは、Notta Memoの出力がまるで「すでに編集されたインタビュー記事」のように、起承転結のある段落として整理されていました。テキストをそのままコピーして原稿の骨組みを作る作業には圧倒的に向いています。
ただし、この「整理」はそのまま文字起こしというわけではありません。発言内容が多少意訳されていたり、文脈に応じた補足が加わっていたりする箇所もあります。逐語記録として使いたい場合は向いていません。また、話者識別が崩れやすい長時間の録音では、誰がどの段落を話しているかが曖昧になることもあります。
Soundcore WorkとPlaud Note Proの逐語的出力
Soundcore WorkとPlaud Note Proはどちらも、タイムスタンプを刻みながら発言をそのままテキスト化する「逐語型」の出力です。「えーと」「あの」といったフィラー(言い淀み)も拾い上げ、現場の生々しい空気感を残してくれます。
Plaud Note Proは、発言のタイミングをコンマ何秒単位で刻もうとする特性から、文章の途中で不自然に改行が入り、細切れになる現象が多発しました。現場で関係のないスタッフが発した一言が文脈をぶった切って独立した行として挟まるといった状況も起こり、そのまま「読み物」として流し読みするには適さない出力になりがちです。
Soundcore Workの出力も傾向は近く、逐語的で読み進めるには多少の加工が必要です。ただし段落の区切りはPlaud Note Proよりは自然で、読み物として使うための編集コストはやや低い印象でした。
比較3:固有名詞・専門用語の変換精度 勝者:Notta Memo(ただし全員要チェック)

固有名詞や専門用語の変換精度については、3サービスの中でNotta Memoがやや優れていますが、どのサービスも完璧ではありません。人間の目による裏取りと修正は、どれを使っても絶対になくならないという現実を実感しました。
一般的な人名の漢字変換においては、Notta Memoのほうが文脈からの推測精度が高く、正しく変換できている箇所が多い傾向がありました。一方、専門的な話題や独自の固有名詞になると、3サービスとも珍妙な誤変換を連発します。
・業界特有の専門用語:文脈から意味が取れる一般的な言葉ではなく、特定ジャンルの専門的な術語になると、SoundcoreとPlaudはそれぞれ異なる別の言葉に誤変換しました。Nottaはやや正解に近い変換ができていましたが、それでも正確ではない箇所が残りました。
・過去の著名人の名前:昭和の映画監督の名前が出た場面では、PlaudとSoundcoreはそれぞれ全く別の人物名に変換し、Nottaも誤変換しました。ただしNottaの誤変換のほうがまだ元の音に近い変換になっており、修正コストが低い傾向でした。
・造語や企画名:取材相手がその場で使った独自の言い回しについては、PlaudとSoundcoreは文脈通りに文字化できた場面もあった一方、Nottaは意味の異なる別の言葉に誤変換するケースもありました。
固有名詞の多い取材ほど、どのツールを使っても事後の確認作業は必ず発生します。この点は3サービス共通の割り切りが必要です。
比較4:相槌・フィラー(言い淀み)の処理方針 勝者:Notta Memo
「えーと」「あの、」「うーん」といった言い淀みをどう処理するかという点でも、実用性においてNotta Memoが優れています。
Soundcore WorkとPlaud Note Proはどちらも、細かな相槌や言い淀みを可能な限りすべて拾い上げて文字にします。現場のリアルな空気感を残せる反面、出力される文字数が膨大になり、「えーと」「あの」をひとつひとつ手動で削除していく作業がそのまま発生します。特に1〜2時間に及ぶ長時間取材では、このフィラー除去の作業量はかなりの負担になります。
一方、Notta Memoはフィラーをある程度自動でカットして整理してくれます。現場の生々しさは多少薄れますが、原稿制作の下地としてすぐ使えるテキストを手に入れるという目的では、Notta Memoの処理方針のほうがはるかに実用的です。
比較5:それぞれの独自の強み

どのサービスも一長一短があり、純粋に精度だけで優劣をつけられるわけではありません。それぞれが持つ独自の強みも比較の材料として重要です。
Notta Memoの強み:AI要約の自動生成と文脈理解
Notta Memoはブラウザ上の操作画面で話者ごとに色の違うアイコンが付いており、誰の発言かが一目で視認できます。また、録音をアップロードすると内容の要約が自動で生成されるため、2時間の取材でも全体像をすぐ把握できます。音源を聞き返す前に「この取材で何が語られたか」を素早く確認できるのは、実務上かなり助かります。
ただし先述のとおり、発言内容がそのまま文字起こしされているわけではない点には注意が必要です。話し言葉を読みやすく整える処理が入るため、逐語の記録として使うには向いていません。
Plaud Note Proの強み:Web会議の直接録音と話者識別の安定性
Plaud Note Proの最も目を引く独自機能は、ZoomやGoogle MeetなどのPC会議のシステム音声をそのまま取り込める機能です。マイク経由ではなくシステム音声として直接録音できるため、リモート取材や会議の議事録作成に非常に向いています。Soundcore WorkとNotta Memoにはない、Plaud Note Proならではの強みです。
また、長時間録音でも話者識別が崩れにくい安定性は、複数人が入り乱れる大型座談会の記録に適しています。
Soundcore Workの強み:磁石装着のコンパクトさとコスパ
Soundcore Workの最大の特徴はマグネットによる固定方式です。指先サイズの本体を衣服の胸元やマイクスタンドに貼り付けるだけで録音を始められ、取材中に手間がかかりません。AI文字起こしや要約の機能はNottaやPlaudと比べて遜色ない水準を持ちながら、価格帯はより手頃な部類に入ります。
また、クラウドへの依存が少ないオフライン動作に対応しているため、インターネット環境が不安定な取材現場でも安心して使えます。
総評:使い方で選ぶ、という現実的な結論

3サービスを実取材で比べた結果、「どれが最強か」という単純な答えは出ませんでした。それぞれの強みが異なる方向にあるからです。
原稿制作の下地として使いやすいテキストを素早く手に入れたいなら、Notta Memoが現時点で最も実用的です。読みやすい整理済みテキスト、フィラーの自動除去、AI要約の自動生成と、ライターの作業を効率化する機能が揃っています。ただし逐語記録には向かず、発言の正確な再現が求められる用途には注意が必要です。
複数人の大型座談会や、ZoomなどのWeb会議の議事録を多く扱うなら、Plaud Note Proが有利です。話者識別の安定性とシステム音声録音機能は、Soundcore WorkにもNotta Memoにも代えられない強みです。
コスパを重視しつつ、マグネットで目立たず装着できる手軽さを求めるなら、Soundcore Workが選択肢に入ります。文字起こし精度はPlaudと同水準で、サービス全体としては比較的リーズナブルです。AIボイスレコーダーを初めて試してみたい方にも検討しやすい入口になるでしょう。
3サービスに共通して言えるのは、どれを使っても固有名詞の確認や話者の名寄せなど、人間によるチェック作業はなくならないという点です。「完璧な文字起こし」を期待するとがっかりしますが、それを割り切って使えば、取材の手間は確実に大幅に減らせます。
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