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8月19日は「国際VPNデー(International VPN Day)」です。あまり馴染みのない記念日ですが、これに合わせて発表された調査の中身が、数字の並びとしてなかなか面白いものでした。
発表したのはサイバーセキュリティ企業のNordVPN(本社:オランダ・アムステルダム、日本代表:小原拓郎)。日本人1,002人への意識調査と、ダークウェブのマーケットプレイスに並んだ28,000件超の出品データ分析を組み合わせた内容です。
はじめに:これはVPNを売っている会社自身の調査です
数字を見る前に、前提を1つだけ共有させてください。この調査を実施したのはNordVPN、つまりVPNを販売している当事者です。「日本人はプライバシー意識が低い」「だからVPNのような、生活を変えずに使える対策が要る」という結論に向かって組み立てられた資料である、という読み方はしておいたほうがフェアだと思います。
そのうえで、個別の数字はかなり具体的で、しかも手法が明示されています。調査の内訳はこうです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査主体 | NordVPN調査チーム |
| 意識調査 | Cint社が2026年4月1日から17日に実施。21カ国で20,000人以上のインターネットユーザーが対象、うち日本は1,002人 |
| ダークウェブ調査 | 脅威エクスポージャー管理プラットフォームのNordStellarと共同。2025年1月から2026年2月のマーケットプレイス出品データを分析 |
| 分析対象 | 重複除去後、16カテゴリにわたる28,000件超のユニークな出品。価格はすべて米ドルに正規化 |
対象マーケットプレイスまで名前が出ています(BidenCash、Russian Market、Exodus Market、Styx Market、xLeetなど)。この手のPR調査としては、手法の開示は丁寧なほうです。以下、数字はすべてこの調査によるものです。
4人に1人が「一日中オフラインは想像できない」
まず入口の数字から。日本人の26%、つまり約4人に1人が「一日中オフラインで過ごすことは想像できない」と答えています。あわせて23%が「趣味の多くをインターネットに頼っている」、25%が「動画配信を見ながらSNSをチェックしてしまう」と回答しました。
3つ目がなかなか実感を伴う数字で、要は画面を1つ見ているだけでは足りない人が4人に1人ということです。メール、SNS、動画配信に常時ログインしたまま日々を過ごす、という状態が前提になっています。
ところが「時間の無駄」と感じる人は9%しかいない
面白いのはここからです。同じ調査で「オンラインで過ごす時間の多くが無駄になっていると感じる」と答えた日本人は、わずか9%でした。世界平均は20%なので、半分以下です。
「オンラインに費やす時間に罪悪感を覚える」と答えた人も15%(世界平均19%)。この2つはいずれも、調査対象となった国・地域の中で最も低い水準だったと報告されています。
一日中つながっていて、それを無駄だとも後ろめたいとも思っていない。これは見方によっては、日本人がスマートフォンとの付き合い方について、他国よりも罪悪感の少ない、達観した関係を築いているとも読めます。少なくとも「ネットに時間を吸われている」という自己嫌悪は、あまり共有されていないようです。
怖がっている情報と、実際に差し出している情報がずれている
もう1つのズレが、不安と行動のあいだにありました。
「自分の個人情報が知らないうちにネット上に出回っていることを懸念する」と答えた人は15%にとどまります。一方で、オンライン上で共有・登録したことがある情報を聞くと、生年月日が52%、フルネームが48%、銀行情報が21%でした。
不安を口にする人が15%なのに、生年月日を出したことがある人は52%。心配している量よりも、差し出している量のほうが3倍以上多いという構図です。NordVPNはこれを「恐れているデータと、実際に自分がさらしているデータが一致していない」と表現しています。
ダークウェブの値段表:Netflixは5ドル未満、Revolutは1,700ドル超
この記事でいちばん読み物として面白いのが、ダークウェブ側の分析です。28,000件超の出品を分類して、カテゴリごとの取引価格の中央値を出しています。
| カテゴリ | サービス例 | ダークウェブでの中央値 |
|---|---|---|
| フィンテック | Revolutアカウント | 1,700ドル超 |
| フィンテック | Wiseアカウント | 約899ドル |
| SNS | TikTok | 約60ドル |
| 決済カード | 盗難クレジットカード情報 | 約27ドル |
| メール | Office 365アカウント | 約26.50ドル |
| SNS | Telegram | 約12ドル |
| ストリーミング | Netflixなど | 5ドル未満 |
並べ替えてみると、いくつか引っかかる点があります。
1つ目は、TikTokのアカウントがクレジットカード情報より高いこと。約60ドル対約27ドルで、2倍以上の開きがあります。カードは止められたら終わりですが、SNSアカウントは乗っ取ったあとに継続的に使える、という違いが値段に出ているのだと考えられます。
2つ目は、Netflixなどのストリーミングが5ドル未満という安さ。Revolutの1,700ドルと比べると340倍以上の差です。ただ「安い」ということは「大量に流れている」ということでもあります。値段が付かないほど安いアカウントを、あなたも1つは持っているはずです。
3つ目は、日本の決済カード情報の中央値が約27ドルで、メールアカウントとほぼ同額だったこと。クレジットカード1枚と、Office 365のログイン1つが、闇市場ではだいたい同じ値段ということになります。
NordVPNの最高技術責任者(CTO)マリユス・ブリエディス氏は「犯罪者が狙うのは、まさにその『当たり前』になった日常のアカウントです。銀行情報のような大きなデータよりも、メールやNetflixのアカウントのほうが、はるかに簡単に、そして安く売買されています」とコメントしています。
「何も諦めたくない」41%は、21カ国中いちばん高い
最後の設問が、この調査でいちばん人間くさいところです。「オンライン上の個人情報を完全に消し去れるとしたら、何を諦めるか」を聞いています。
日本の回答は、飲酒26%、ビデオゲーム23%、スポーツ19%、性生活15%。そして「何も諦めたくない」が41%でした。
この41%が、調査対象となった21カ国・地域の中で最も高い数字です。世界平均は32%、最も積極的に何かを手放すと答えた韓国・メキシコ・米国はいずれも22〜25%でした。
日本の回答の中では飲酒がトップというのも、なかなか味わい深い結果です。プライバシーと引き換えに差し出せるものを順番に並べたとき、いちばん先に来るのがお酒で、それでも4割は「何も渡さない」と答える。ブリエディス氏はこれを受けて「大きく行動を変えずに取り入れられる、VPNのような『普段どおり使いながら守れる』対策が重要になります」と述べていますが、ここは自社製品への導線でもあるので、そのつもりで読んでおくとよさそうです。
NordVPNが挙げた、今日から見直せる5つ
リリースでは、国際VPNデーに合わせて次の5点が提案されています。目新しさはありませんが、逆に言えば、目新しくないことをやっていないから漏れるということでもあります。
・公共Wi-Fiを使うときはVPNを使う
・使っていないサービスからログアウトし、不要なアカウントを整理する
・氏名、生年月日、住所、交際状況などをSNSやフォームで共有するのは必要最小限にする
・ECサイトへのクレジットカード情報の保存は最小限にする
・サービスごとに違う複雑なパスワードを設定し、可能な限り多要素認証(MFA)を有効にする
このうち費用ゼロですぐできるのは、2つ目と5つ目です。とくに「使っていないサービスからログアウトする」は、上の値段表を見たあとだと意味が変わって見えます。5ドル未満で売られているストリーミングのアカウントは、たいてい放置されていたものです。
この数字をどう受け取るか
念のため、読むときの注意点を3つ挙げておきます。
まず、意識調査はオンラインパネル(Cint社)で集めた回答なので、そもそもインターネットをよく使う層に寄ります。「一日中オフラインは無理」が26%という数字も、その前提で見る必要があります。
次に、ダークウェブの価格は出品価格の中央値であって、実際にその値段で売れたという意味ではありません。相場観の目安として読むのが妥当です。
そして冒頭に書いたとおり、調査主体はVPN事業者です。「日本人は意識が低い」という結論そのものより、個別の数字がどう並んでいるかを見たほうが、この資料は面白く読めると思います。生年月日を出した人が52%で、不安を感じている人が15%、という並びの妙は、誰が調べても変わりません。
まとめ
日本人の26%が「一日中オフラインは想像できない」、それを無駄だと思う人は9%、罪悪感を覚える人は15%、プライバシーのために何も諦めたくない人は41%。並べると、つながりっぱなしであることを日本人はあまり気に病んでいない、という像が浮かびます。
その良し悪しはさておき、ダークウェブでNetflixのアカウントが5ドル未満で流れているという事実だけは、覚えて帰る価値があります。放置しているサービスからログアウトするのは今日でもできます。
Source: Nordvpn S.A. プレスリリース(PR TIMES)/国際VPNデー(NordVPN)
画像出典: NordVPN
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