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Apple Watch Series 12とApple Watch Ultra 4に、「準備度」という新しい機能が入りました。英語版ではreadiness(レディネス)と呼ばれています。
その日の身体の状態を0〜10のスコアで示すもので、Appleが今年いちばん力を入れて説明した機能でもあります。
ただ、この手のスコアはAppleが初めて出したものではありません。OuraもWHOOPもGarminも、Samsungも、Googleも、すでに似たものを持っています。しかも各社で名前も尺度もバラバラです。
準備度とは何なのか。他社とどう違うのか。そして、この数字はどこまで信じてよいのか。順に見ていきます。
準備度とは何か
Appleの説明によると、準備度は次のデータを分析して算出されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入力データ | 最近のアクティビティ、トレーニングの負荷、バイタル、睡眠スコア |
| スコアの範囲 | 0〜10 |
| 添えられる言葉 | 「休養」「無理せずに」「準備完了」「絶好調」の4段階 |
| 更新のタイミング | 毎朝提示され、その日のうちにも更新される(激しいワークアウトや日中のバイタルの変化を反映) |
| 根拠 | Apple Heart and Movement Studyのデータをもとに、Appleの運動科学者と医師が共同で開発 |
| 確認できる場所 | Apple WatchまたはiPhoneのフィットネスアプリ |
特徴的なのは、スコアに影響した要因が表示されることです。「なぜ今日は低いのか」を、睡眠なのか、前日の運動なのか、バイタルの変化なのかまで見られます。数字だけを出して終わりにしない作りになっています。
使えるのはSeries 12とUltra 4だけ

先に押さえておきたいのが対応機種です。
Apple公式のモデル比較ページには初代から最新まで歴代19モデルが並んでいますが、「準備度アプリ」に印が付いているのは2列だけ。Apple Watch Series 12とApple Watch Ultra 4です。
理由は、準備度が新しいヘルスセンシングシステムを前提にしているからです。心拍を一日中5秒ごとに測り、HRVを最短5分ごとに取る。この密度のデータがあって初めて成立するので、watchOS 27に更新しても旧モデルには降りてきません。
watchOS 27で来る機能と、新モデルでしか使えない機能の切り分けはこちらにまとめています。
同じことを、各社が別の名前でやっている
ここからが本題です。「今日どれだけ動けるか」を1つの数字で示す機能は、いまや各社が持っています。ただし呼び方も尺度も揃っていません。
| ブランド | 名称 | 尺度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Apple | 準備度(readiness) | 0〜10 | 4段階の言葉が添えられる。要因が表示される |
| Oura | レディネススコア | 0〜100 | 睡眠、安静時心拍数、心拍変動、体温から算出 |
| WHOOP | リカバリー | 緑・黄・赤 | 数字ではなく色で今日の余力を伝える |
| Garmin | Body Battery | ― | 電池の残量にたとえて見せる |
| Samsung | エナジースコア | 100点満点 | 9要素のうち6つが睡眠に関するもの |
| エナジースコア | 1〜100 | 30を下回ると「低」に分類される | |
| Amazfit | HybridCharge | 0〜100 | 主観データも入れる(後述) |
| Polar | Nightly Recharge | ― | 夜間の回復に焦点を当てる |
こうして並べると、Appleの0〜10という刻みの粗さが目立ちます。0〜100が主流のなかで、Appleだけ10段階です。
これは推測になりますが、細かい数字に振り回させないための設計という見方はできます。63点と67点の違いに意味があるのかと言われると難しいところで、そこを最初から作らない、という判断とも読めます。
Samsungは、ほぼ睡眠の点数だった
尺度だけでなく、何を見ているかも各社で違います。
Galaxy Watchのエナジースコアを実機で分解した記事では、スコアを構成する9つの要素のうち6つが睡眠に関するものでした。運動に関わるのは「前日の活動」と「運動の規則性」の2つだけです。
つまりSamsungのエナジースコアは、実質的には睡眠の総合点に近いということになります。同じ「今日どれだけ動けるか」を名乗っていても、中身の重心はここまで違います。
Amazfitだけ、主観を入れている
もうひとつ目立つのがAmazfitです。HybridChargeの仕組みを実機で確かめた記事で書きましたが、この指標は生体データだけで作られていません。
RPE(自覚的努力度)、つまり「そのワークアウトが自分にとってどれくらいきつかったか」の申告。そしてLifeLoadイベントという、仕事の繁忙度や移動、カフェイン摂取といった日々の状況。これらをセンサーのデータと一緒に計算に入れます。
センサーで測れないものを本人に申告させる、という発想です。ほかの各社が生体データだけで完結させているなかで、これは明確に違う設計になっています。
Googleは、社内でも呼び名が揃っていない
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呼び名がバラバラなのは会社間だけの話ではありません。Pixel Watch 5を実際に着けて確かめたところ、Googleのアプリの中で表記が割れていました。
アプリの画面には「エナジースコア」と出るのに、AIコーチは「レディネススコア」と呼びます。 しかも同じタイミングで、数字が32と25で違っていました。
同じ日、63というスコアに対して見出しでは「中」、一覧では「良好」と別の評価が付く、という食い違いも見つけています。凡例では30〜64が「良好」なので、見出しの表記だけが揃っていません。
背景として、Pixel WatchにはFitbitの「Daily Readiness Score」を積んでいた時期があります。Google Healthへの統合で画面の表記が変わり、コーチ側に古い呼び名が残っている、という見方はできます。ただしGoogleがそう説明しているわけではないので、ここは「呼称が揃っていない」という事実までにとどめておきます。
スコアが低い日は、本当に体調が悪いのか
では、この手のスコアは当たるのでしょうか。
前述のPixel Watch 5を着け続けていたときに、ちょうど体調を崩した日がありました。そのときの記録が残っています。
| 指標 | その日の値 | 普段 |
|---|---|---|
| エナジースコア | 25(「低」に分類) | 週の平均は53 |
| 心拍変動(HRV) | 31ミリ秒 | 直近5日間は35〜39ミリ秒 |
| 睡眠スコア | 84(「良好」) | ― |
| 睡眠時間 | 6時間49分 | ― |
| 安静時心拍数 | 68bpm(範囲内) | 週後半にかけて右肩上がり |
熱も咳もなく、顔色もいつもどおり。それでも朝から体が重い、という日でした。人に説明しづらい類の不調です。
面白いのは、睡眠は「良好」だったことです。寝不足では説明がつきません。ちゃんと眠ったのに回復していない、という状態を、HRVの落ち込みだけが捉えていました。
翌日にはHRVが37ミリ秒まで戻り、スコアも63へ回復しています。体感の変化と数字の動きは、この2日間については一致していました。
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ただし注意点もありました。翌日に週間グラフを見ると、当日15時台に見た25という数字が30あたりに修正されているように見えたのです。途中で見た数字が、その日の最終値とは限りません。
ただし、この種のスコアには「正解」が存在しない
ここが、いちばん押さえておきたい部分です。
ミシガン大学などの研究チームによるレビュー論文は、スマートウォッチの指標を1つずつ検証したうえで、レディネス/回復スコアについてこう位置づけています。
比較すべき基準そのものが存在しない。
心拍数なら多誘導心電図、VO2maxなら呼気ガス分析、睡眠なら睡眠ポリグラフ検査と、多くの指標には「正解」にあたる検査があります。ところが回復スコアには、それがありません。
論文が引く研究では、10社14種類の合成スコアを評価したところ、独自の重み付けについて公表された検証がほとんどなかったとされています。理論的な説明が、経験的な証拠より前に出ている状態だという指摘です。
同じ生理データを入れても、機種が違えば違うスコアが出ます。だから論文は、これらを「生理学的な測定値」ではなく「アルゴリズムによる要約・解釈」として読むよう求めています。
運動科学者のハンター・ベネット氏も同じ趣旨の指摘をしています。回復スコアはHRVと睡眠スコアを組み合わせて作られますが、そのどちらも手首のセンサーによる推定値です。不正確な指標を2つ掛け合わせている、という構造になります。
それでも、使い道はある
では意味がないのかというと、そうではありません。押さえるべきは3つです。
1つ目は、絶対値ではなく自分の中の変化を見ること。 「63点」に意味があるのではなく、「普段より20点低い」ことに意味があります。他人のスコアと比べるのも意味がありません。重み付けが会社ごとに違うので、そもそも比較できない数字です。
2つ目は、要因を見ること。 Appleの準備度は何が効いたのかを表示します。Pixel Watchも「心拍変動が低い」「最近の睡眠が良い」といった要素を並べます。スコアそのものより、その内訳のほうが判断材料になります。
3つ目は、体感と併用すること。 「回復が足りていません」と出ても体が軽いなら動いてよく、「準備完了」と出ても重いなら控えるほうが賢明です。前述の実測では数字と体感が一致していましたが、常にそうとは限りません。
まとめ
Apple Watchの準備度は、OuraやWHOOPが先に育ててきた領域に、Appleが正面から入ってきた機能です。0〜10という粗い刻みと、要因を見せる作りが特徴になっています。
同じことをやっている機能は各社にありますが、名前も尺度もバラバラです。準備度、レディネス、エナジー、リカバリー、Body Battery、HybridCharge。 Googleに至っては、同じアプリの中で2つの呼び名が併存しています。
そして、この種のスコアには比較すべき基準が存在しません。測定値ではなく、各社が独自の重み付けで作った要約です。
だからこそ、数字そのものではなく、自分の普段からのズレと、その内訳を見る。この読み方さえ持っていれば、準備度は十分に役立つ機能だと思います。
Source: Apple Newsroom(2026年9月9日)/Apple公式「Apple Watchのモデルを比較する」/Lepley et al., Sensors 2026, 26(14), 4486/Hunter Bennett, The Conversation。記事中の一部の画像はApple提供、実機画面は編集部撮影
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