Ray-Ban Metaをオランダ大手眼鏡チェーンが販売停止|10月2日に発表 英国のパブは使用を制限し米国では集団訴訟【海外ニュース】

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テーブルに置かれたスマートグラスのイメージ写真。ハンズフリーで周囲の情報を読み取るウェアラブルデバイス

2026年10月2日、オランダの大手眼鏡チェーン「Hans Anders(ハンス・アンダース)」が、オランダとベルギーでRay-Ban Metaの販売を停止したと発表しました。ロイターが伝えています。ロイターは、小売店によるこうした動きとしては最初期のものだとしています。

欧州ではこの1か月、オランダの個人データ保護当局が注意を呼びかけ、消費者団体がMetaに提訴を予告し、英国ではパブチェーンが店内での使用を制限するなど、Ray-Ban Metaへの反発が広がっています。日本では9月24日にRay-Ban Meta(Gen 3)が発売されたばかりです。

この記事では、オランダ・英国・米国で何が起きているのか、Metaがどう説明しているのか、カメラを付けない製品の動きまでを、ロイターなどの報道と各団体の発表をもとに整理します。

オランダの大手眼鏡チェーンHans AndersがRay-Ban Metaの販売を止めた

手書きのメモ用紙の上に置かれた丸いフレームの眼鏡のイメージ

ロイターによると、Hans Andersは10月2日、オランダとベルギーでのRay-Ban Metaの販売を停止したと明らかにしました。同社の広報担当者は「スマートグラスをめぐって続いている公的・政治的な議論と、この技術をどのような条件で使えるのかという疑問を受けた判断」と説明しています。

Hans Andersは、投資会社KKR傘下のNexeye(ネクスアイ)の子会社です。ロイターによると、Nexeyeはオランダ・ベルギー・ドイツ・オーストリア・スウェーデンの5か国で776店舗を運営しており、ドイツ・オーストリア・スウェーデンではもともとRay-Ban Metaを扱っていません。つまり、販売していた2か国の両方で取り扱いをやめた形です。

当局・消費者団体・支援団体が9月に相次いで動いた

販売停止の前には、オランダで当局や団体の動きが続いていました。日付順に並べると次のとおりです。

日付 発表した組織 内容
9月10日 Consumentenbond(オランダの消費者団体) 9月2日のMetaのアップデート後も、撮影ランプをシールで覆った状態で動画を撮れたと発表。カメラ付きメガネの禁止を求めた
9月22日 AP(オランダの個人データ保護当局) カメラ付きメガネで撮った人を「勝手に使ったり、共有したり、公開したりはできない」と注意を呼びかけ。施設には館内ルールでの禁止を助言
9月29日 Consumentenbond Metaに要求書を送付。2週間以内に法律に合うよう改めなければ訴訟を起こすと表明
9月29日 Offlimits(ネット上の虐待と闘う団体)とThe Firewall MetaとEssilorLuxotticaに販売中止を要求。10月13日までに応じなければアムステルダム地裁に仮処分を申し立てるとした
10月2日 Hans Anders オランダとベルギーで販売を停止

APは、識別できる人が写った写真や動画は、写っている人の同意があれば共有や公開ができる一方、公共の場では全員に前もって知らせて同意を得るのは実際にはほぼ不可能だとしています。撮影ランプについても「それだけでは個人データの扱いを知らせるのに十分ではない」との立場です。さらに、AIアシスタントに目の前のものを尋ねる機能では、写真や動画を保存しなくても周りの人のデータが処理されうると指摘し、メーカーにも、撮影やAIが動いていることをはっきり示し、表示の細工を防ぐよう求めました。

Consumentenbondは、撮影ランプが日差しの下や離れた場所からは見えにくいことや、写った人の宗教・健康などが映像から分かりうることを問題にしています。Offlimitsは、相談窓口にすでにこのメガネで撮られた被害者から相談が来ていると説明しています。

英国ではパブチェーンWetherspoonなどが店内での使用を制限

パブのカウンターでグラスに注がれるビールのイメージ

英国では、国内最大級のパブチェーンWetherspoon(ウェザースプーン)を含む複数の店が、Ray-Ban Metaの使用を制限しています。ロイターが9月22日に報じ、10月2日にはキプロスのCyprus MailやウクライナのUA.NEWSも伝えました。理由は、気づかれないうちに撮影される「隠し撮り」への懸念です。

スマートグラスを使える場所を、店や施設の側が決める動きは英国だけではありません。オランダのAPも施設側に館内ルールでの禁止を勧めており、米国ではニューヨーク州が裁判所での使用を禁じています。

米国ではAI学習のための映像確認をめぐり集団訴訟が起きている

白い台の上に置かれた木製の裁判用ガベルのイメージ

米国では、カリフォルニア州のClarkson Law Firm(クラークソン法律事務所)が、MetaのAIグラスの利用者を代表して集団訴訟を起こしています。同事務所の発表によると、訴えは2026年3月4日夜にカリフォルニア北部地区連邦地裁へ出されました。被告はMetaと、メガネを手がけるLuxottica of Americaです。

ここに書くのは原告側の主張で、裁判所が事実と認めたものではありません。

原告側の主張は次のとおりです。

・Metaは「プライバシーのために作られた」とうたって販売したが、実際には撮った映像が利用者の知らないうちに海外の委託先に送られていた
・Metaのサーバーに上がった映像を、AIを学習させるために人間のアノテーター(ラベル付けの作業者)が見てラベルを付けていた
・その中には、着替え、トイレの利用、金融情報を扱う場面が含まれていた

原告代理人のRyan Clarkson氏はロイターに、撮られた人の多くは撮影に気づいていないようだったと話しています。

これに対してMetaは、訴えの主張には同意せず争うとしています。ロイターによると、製品改善のために利用者のデータを確認するのは業界で一般的なやり方であり、本人が分かる情報は取り除いている、というのがMetaの説明です。

Metaは「撮影ランプは消せず、覆うとカメラが止まる」と説明

キーボードの上に置かれた赤い南京錠。データの保護をイメージした写真

Metaの広報担当者はロイターに、「カメラを搭載したすべてのモデルには前面に明るいライトがあり、写真や動画を撮るときに点滅する。このライトはオフにできず、覆ったり細工したりするとカメラが無効になる」と答えています。

Metaの日本語のプライバシーページでも、各AIグラスに「キャプチャLED」という白色のライトがあり、動画の撮影中はずっと点滅すると説明されています。ライトが覆われたり、改造されたり、壊されたりしたことを検知すると、カメラは自動で無効になるとしています。

一方で、オランダのConsumentenbondは、9月2日のアップデート後もシールでランプを覆った状態で撮影できたと発表しています。メーカーの説明と、消費者団体の検証結果が食い違っている状態です。

カメラを付けない、押したときだけ録る製品も出てきた

会議の席で身振りを交えて話す人と、テーブルに置かれたノートPCとスマートフォン

ロイターは9月22日の記事で、プライバシーへの不安を形で減らそうとするメーカーの動きもまとめています。数字はいずれも各社が明らかにしたものです。

会社 取り組み 各社が示した数字など
Even Realities(中国・深セン) カメラを載せないスマートグラス。G1を2024年、G2を2025年11月に発売 7月に企業評価額10億ドル。年末までに利用者は数十万人の見込み
Pocket(米サンフランシスコ) スマホに付ける録音機。ボタンを押したときだけ会話を録る 発売から8か月で約17万台が使われている
Plaud イヤホンとケースの「Plaud One」(Explorer Edition、249.99ドル)は起動したときだけ録音し、光や音声で周りに知らせる 利用者250万人、年間経常収益1億ドル超
Samsung Gentle Monster、Warby Parkerと組み、年内にスマートグラス市場へ参入する計画 スマホの置き換えとは見ていない

Even Realitiesの創業者Will Wang氏は、元AppleのエンジニアでApple Watchの開発に携わった人物です。Wang氏は、スマートグラスが隠し撮りと結び付けて見られるようになっていると話し、より確かな保護の仕組みができるまでカメラは待つべきだとしています。

OpenAIのサム・アルトマンCEOは2025年12月、記者に向けて、生活のすべてを聞いて見ている機器がクラウドのサーバーで動くことを、多くの人は望まないと述べました。データは端末の中で処理すべきとの考えです。端末内での処理は、プロセッサーの増産次第で「さらに数年かかるかもしれない」とも話しています。

調査会社IDCのJitesh Ubrani氏は、スマホにカメラとマイクが行き渡った頃にも同じような不安があったと指摘します。そのうえで、社会が求めているのは撮られる人の同意と、撮られていると分かることで、録画そのものに反対することとは違うと話しています。

日本ではRay-Ban Meta(Gen 3)が9月24日に発売されたばかり

新宿の繁華街に並ぶビルと看板の街並み

日本では、2026年9月24日にRay-Ban Meta(Gen 3)が78,980円(税込・参考価格)から発売され、メガネスーパーやビジョンメガネなどのメガネ店でも取り扱いが広がっています。欧州のような販売停止の動きは、10月3日時点で日本では伝えられていません。

日本の個人情報保護委員会は、特定の個人を識別できる映像は個人情報に当たるとの考え方をQ&Aで示しています。ただ、このQ&Aは主に事業者が防犯カメラなどで撮影する場面を想定したもので、個人がカメラ付きメガネで撮る場面について、公的機関がまとまった解説を出しているかは、確認できた範囲では見当たりませんでした。

法律の当てはめは場面によって変わるため、ここでは断定しません。使う側としては、店や施設のルールに従うこと、人が写った写真や動画を公開する前に相手の了解を取ることが、欧州でも日本でも変わらない基本になります。

まとめ

霧に包まれて先が見えない森の中の一本道

オランダでは、9月に当局が注意を呼びかけ、消費者団体と支援団体がMetaに要求書を送り、10月2日に大手眼鏡チェーンが販売を止めました。英国ではパブチェーンが店内での使用を制限し、米国ではAI学習のための映像確認をめぐる集団訴訟が続いています。

Metaは、消せない撮影ランプと、覆うとカメラが止まる仕組みで周りの人を守っていると説明していますが、オランダの消費者団体は覆っても撮影できたと発表しており、言い分は分かれたままです。Consumentenbondの要求書の期限は10月中旬、Offlimitsの期限は10月13日で、Metaがどう応じるかで次の展開が決まります。

日本でもRay-Ban Metaを手に取れる店が増えています。買う人も、周りでかけている人を見かける人も、欧州で何が問題になっているのかを知っておくと、使う場面を考えるときの手がかりになります。

Source: Reuters(2026年10月2日)
Reuters(2026年9月22日)
UA.NEWS / Cyprus Mail
Autoriteit Persoonsgegevens
Consumentenbond(9月10日) / Consumentenbond(9月29日)
Offlimits
Clarkson Law Firm
Meta AIグラス プライバシー
個人情報保護委員会 カメラに関するQ&A

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