Googleがスマートウォッチで高血圧の兆候を見分けるAIを発表|カフ不要で特異度90% Natureに掲載【海外ニュース】

新製品ニュース

公開日:

Pixel Watch 5の裏面。円形のセンサー部の中央が緑色に発光し、その周囲に測定用の電極が並んでいる

Googleの研究部門 Google Research が2026年11月5日(米国時間)、市販のスマートウォッチに載っているセンサーだけで高血圧の兆候を見分けるAIの研究を発表しました。腕に巻くカフ(加圧帯)で事前に合わせる「較正」は要りません。論文は科学誌 Nature に掲載されています。

この研究は、Pixel Watchで提供が始まったGoogle Healthアプリの「Health Guardian」の「血圧の傾向」を作るときの土台になった、とGoogleは書いています。ただし研究そのものは初期の段階で、いまの製品の機能をそのまま説明したものではありません。

※アイキャッチ画像はPixel Watch 5の裏面のセンサーです。検証にはPixel Watch 3を使いました(論文公開前の版による)。

Google Researchとハーバード大の研究 自覚のない高血圧を見つけるのがねらい

研究を行ったのは、Google Researchと、米ボストンのベス・イスラエル・ディーコネス医療センター、ハーバード大学医学部のチームです。AIの名前は「AI-PPG-ACC-HTN」で、使うセンサーの名前(PPGとACC)と高血圧(HTN)を並べたものです。

Googleによると、高血圧の人は世界で10億人を超え、その半数以上は自分が高血圧だと気づいていません。とくに18〜44歳の若い世代で、診断されないまま過ごしている人が多いとしています。高血圧はほとんど症状が出ないため、健康診断などで血圧を測る機会がなければ見過ごされがちです。

そこで、ふだん着けているスマートウォッチが日常のデータから「高血圧かもしれない」と気づかせ、病院でのきちんとした検査につなげる。それがこの研究のねらいです。

使うのは光の脈波センサーと加速度センサー 数日分のデータから判定

AIが読み取るのは、2種類のセンサーのデータです。

・光学式の脈波センサー(PPG):手首に光を当てて、反射した光から血液の量の変化、つまり脈の波形をとらえる。スマートウォッチの心拍計と同じ仕組み
・加速度センサー(ACC):じっとしている時間を見分けるのに使う。あわせて、心臓が血液を大動脈へ送り出すときに手首に伝わるごく小さな揺れ(心弾動図、BCG)もとらえる

学習は2段階で行われました。まず2,109人分、合わせて492,347時間のセンサーデータでAIに波形の特徴を覚えさせます。この段階では、血圧が高いかどうかの答えは与えていません。次に、15秒ごとの波形の特徴を数日分平均し、身長と組み合わせて「高血圧である確率」を出します。身長を使うのは、心臓から手首までの血管の長さの目安になるためです。

出てくるのは「上が135、下が85」のような血圧の値ではありません。数日分のデータから、血圧が高い状態が続いているかどうかを判定する仕組みです。

196人で確かめた結果 特異度は90%で診察室の測定より見逃しが少ない

精度の確認は、米国の5つの施設で196人を対象に行われました。参加したのは、心臓や血管の病気がなく、血圧の薬を飲んでいない人たちです。正解として使ったのは、24時間持ち歩いて自動で血圧を測り続ける「24時間自由行動下血圧測定(ABPM)」で、高血圧の診断でいちばん確かな方法とされています。

結果を読むときは、次の3つの言葉を押さえておくと分かりやすくなります。

・感度:高血圧の人のうち、正しく「高血圧の可能性あり」と判定できた割合。高いほど見逃しが少ない
・特異度:高血圧でない人のうち、正しく「問題なし」と判定できた割合。高いほど空振りが少ない
・陽性的中率:「高血圧の可能性あり」と判定された人のうち、実際に高血圧だった割合

まず、最初のふるい分けとして使った場合です。比べた相手は、病院の診察室で測る血圧です。

項目 スマートウォッチのAI 診察室での血圧測定
感度 65.8% 55.3%
特異度 90.0% 90.0%
陽性的中率 80.6% 77.8%

次に、診察室で血圧が高く出た48人を、もう一度確かめる場面で使った場合です。白衣を見ると血圧が上がる「白衣高血圧」のように、診察室の値だけでは本当に高血圧なのか分からない人がいます。こうした人を確かめ直す方法として、ほかの2つの方法と比べています。

項目 スマートウォッチのAI 診察室で測り直す 自宅で数日間測る
感度 78.4% 67.6% 89.2%
特異度 90.9% 63.6% 81.8%
陽性的中率 96.7% 86.2% 94.3%

確かめ直す場面では、特異度と陽性的中率が3つの方法の中でいちばん高くなりました。見逃しの少なさ(感度)では自宅で数日間測るほうが上ですが、空振りの少なさではスマートウォッチのAIが上回っています。毎日カフを巻いて測らなくても、着けて過ごすだけでここまでの結果が出ています。

高リスクと判定された人の脈は立ち上がりが遅く 血管が硬い可能性を示す

AIがどんな波形を「高血圧の可能性が高い」と見ていたのかも調べられています。スコアがいちばん高かった人たちといちばん低かった人たちの平均の波形を比べると、高いグループには次のような特徴がありました。

・脈の山の幅がやや狭い
・心臓が血液を送り出すときの脈の立ち上がりが遅い
・脈の波形を細かく分けたときの比率(d/a比)が低い
・手首の小さな揺れ(BCG)の波形にも違いがある

Googleは、こうした特徴が動脈の硬さを示している可能性に触れています。AIの判定が、医学的に説明のつく波形の変化をとらえていることを示す結果です。

Pixel WatchのHealth Guardianの「血圧の傾向」につながった研究

Pixel Watch と、Google Health アプリに表示された Health Guardian の月次サマリー。血圧トレンドとインスリン抵抗性トレンドがそれぞれ High と表示されている

画像:Google

Googleはブログの中で、この研究の成果が Google Healthアプリの Health Guardian にある「血圧の傾向」の機能づくりに役立ったと書いています。

Health Guardian は2026年9月に海外で提供が始まった機能で、Pixel Watch 3・4・5では追加の費用なしで使えます。血圧の傾向は毎月1日に届き、届くには1週間のうち5日以上続けて着けている必要があります。日本での提供開始は、まだ案内されていません。

一方でGoogleは、ブログの最後に「ここで紹介した手法は探索的なもので、既存または今後の製品の機能やデバイスの能力を示すものではない」と明記しています。Health Guardian の血圧の傾向が、このAIと同じ仕組み・同じ精度で動いているとは書かれていません。

Apple Watchの高血圧パターン通知も光学センサーで30日間の傾向を見る

スマートウォッチの光学センサーで高血圧の兆候を探す取り組みは、Appleも進めています。日本でも2025年12月に使えるようになった Apple Watch の「高血圧パターンの通知」は、光学式心拍センサーのデータを30日間かけて分析し、高血圧の傾向が見られたときに通知する機能です。

Appleが公開した資料では、2,229人が参加した臨床研究で、特異度92.3%、感度41.2%とされています。Googleの研究と同じく、空振りを少なくすることを優先した作りです。ただし、正解として使った測定方法(Appleは上腕式の家庭用血圧計で30日間)や参加者の条件が違うため、数字をそのまま並べて優劣を決めることはできません。詳しくはApple Watchの高血圧通知を支える臨床データの記事で紹介しています。

診断の代わりにはならない 血圧計で確かめるきっかけとして使う研究

Googleは、スマートウォッチでの高血圧のふるい分けは、腕に巻く標準的な血圧計の代わりになるものではなく、単独で診断を下すものでもないとしています。今回の研究は、実際に使えるかを確かめる初期の段階のものです。

想定しているのは、ふだん着けているだけで高血圧のリスクがありそうな人を見つけ、病院での正式な検査を受けるきっかけにする使い方です。参加者196人は米国の5施設で集められ、血圧の薬を飲んでいる人や心臓・血管の病気がある人は含まれていません。日本人や、すでに治療を受けている人に同じ結果が当てはまるかは、これからの研究を待つことになります。

腕帯を巻かなくても、着けているだけで高血圧の可能性に気づける時代が、研究の面からも近づいてきました。スマートウォッチで血圧を扱うほかの研究や製品は、下の記事で紹介しています。

Source: Google Research Blog、Nature

あわせて読みたい関連記事

9月に提供が始まったPixel Watchの「血圧の傾向」は、対応機種と届く条件をこちらで確かめられます。

Google Healthの「Health Guardian」が提供開始と海外発表|Pixel Watch 3以降は無料で血圧とインスリン抵抗性の傾向が毎月1日に届く

Apple Watchの高血圧パターン通知の精度を、臨床データから読み解いた記事です。

Apple Watchの高血圧通知を支える“2,000人超の臨床データ”とは? 日本提供開始で知っておきたい科学的根拠

光ではなく弱い電流で血圧を連続して測る、米ユタ大のスマートウォッチ研究です。

米ユタ大が「カフ不要」で血圧を連続モニタリングできるスマートウォッチを開発|Nature Communicationsに掲載

手首のウェアラブルと血圧計のデータから、AIが高血圧緊急症を予測した研究です。

手首のウェアラブルと血圧計のデータでAIが高血圧緊急症を最大3日前に予測|睡眠中に血圧が下がらない人はリスク約5倍 米心臓協会で発表【海外ニュース】

Pixel Watchのモデルや選び方は、こちらのガイドで。

Googleスマートウォッチ徹底ガイド

Pixel Watchの最新ニュースはタグページにまとめています。

Google Pixel Watchの記事一覧

目的別・記事の見つけ方

「どのスマートウォッチを買えばいい?」「買ったけど使い方が分からない」。そんなときに最初に読んでほしい記事を、目的ごとに選びました。はじめての1台選びから、買ったあとの使い方まで。目的に合わせて読んでほしい記事を選びました。

目的別の記事の探し方ガイドを見る
※本記事のリンクから商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームより当サイトに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報になります。
     

スポンサーリンク