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代金引換、いわゆる代引きは「先にお金を払わなくていいぶん安全」と思われがちな支払い方法です。実際、前払いして商品が届かないという事故は起きません。ところが国民生活センターが2026年8月5日に公表した集計を見ると、その代引きに関する相談だけが、ほかの手口を引き離して増えていました。
2025年度に全国の消費生活センター等が受け付けた相談は100.6万件。そのうち販売方法・手口別で6位の「代引配達」は、前年度の20,472件から30,078件へ、1年で46.9%増えています。上位10手口のなかで、これだけの伸びを示したものはほかにありません。
増えたのは代引きだけ、という数字の形

まず全体像です。手口別ランキング上位10位のうち、2年連続で入っている9項目を並べると、増減の差がはっきり出ます。
| 手口 | 2025年度 | 2024年度 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 代引配達 | 30,078件 | 20,472件 | +46.9% |
| インターネット通販 | 225,388件 | 191,471件 | +17.7% |
| かたり商法(身分詐称) | 39,019件 | 34,403件 | +13.4% |
| 電話勧誘販売 | 56,663件 | 50,458件 | +12.3% |
| 定期購入 | 98,455件 | 94,559件 | +4.1% |
| 点検商法 | 19,696件 | 19,249件 | +2.3% |
| 無料商法 | 16,922件 | 17,013件 | -0.5% |
| 家庭訪販 | 52,740件 | 55,131件 | -4.3% |
| サイドビジネス商法 | 13,368件 | 14,431件 | -7.4% |
もうひとつ気になる動きがあります。2025年度は「偽サイト」が13,419件で9位に入りました。2024年度はトップ10圏外だった項目です。代引きと偽サイトが同時に上がってきているというのが、今年度の形です。
なお、この「代引配達」の件数は、販売方法そのものに問題があったとカウントされた相談だけを集計したものです。代引きで買って普通に届いた取引は含まれていません。
ネット通販に絞ると、半分が「偽物」か「連絡が取れない」
国民生活センターは、この代引きトラブルについて2025年8月に単独の注意喚起も出しています。そちらではネット通販での代引き配達に絞った集計が公表されていて、中身がよりはっきり見えます。

件数は2019年度の5,623件から2024年度の14,013件へ、5年で2.5倍になりました。そのうち「偽物や連絡不能等」が52.5%と半分を超え、「外国が関係する」ものが26.3%と4件に1件を上回っています。外国が関係する割合は2019年度の7.5%から一貫して上がってきました。
海外から安く取り寄せる買い方が広がったぶん、そこに混ざった悪質な販売サイトも一緒に増えている、という読み方ができます。Amazonでしか見かけない“謎ブランド”の家電を検討したことがある方なら、感覚として近いものがあるはずです。
実際に寄せられている相談
同じ注意喚起には、具体的な相談事例も載っています。ガジェットを買う人にとって他人事でないものを抜き出します。
・大手家電メーカーのロゴが掲載されている広告を見てポータブルファンヒーターを代引きで注文したら、そのメーカーとは無関係の品物だった
・ブランドのスニーカーが安く売られていたので、代引きなら届かなければ払わなくていいと思って注文したが、届いた商品は偽物だった
・SNS広告から有名スポーツメーカーのセーターを代引きで買ったら偽物だった。注文時に最終確認画面がなく、販売サイトの連絡先も不明だった
・販売サイトでランタン2点を代引きで購入したが色違いが届き、販売サイトと連絡がつかず、宅配事業者にも「発送元はわからない」と言われた
3つ目の「最終確認画面がなかった」は、そのまま危険信号です。ネット通販では注文の最終確認画面を表示することが義務づけられており、消費者庁もこの画面のスクリーンショット保存を呼びかけています。画面自体が出てこない時点で、その店は法令を守っていません。
注文する前に見る5つのサイン
国民生活センターは2023年の注意喚起で、「偽物が届く通販サイト」に共通する特徴を整理しています。注文ボタンを押す前のチェックリストとして、そのまま使えます。
・販売価格が大幅に値引きされている
・サイトに書かれている日本語の字体や文章表現がおかしい
・販売業者の名称・住所・電話番号が表示されていない、または虚偽や無関係の情報になっている
・支払い方法が代引きしか選べない
・クレジットカード決済で注文したのに、一方的に代引きへ変更される
3つ目は法律の話でもあります。特定商取引法11条により、通販サイトは販売業者の名称・住所・電話番号などを広告に表示しなければなりません。書いていない時点で、その店は違法な状態です。
4つ目と5つ目は、代引きトラブルに特有のサインです。まっとうな店がわざわざ決済手段を代引き一本に絞る理由はあまりありません。逆に、販売側から見た代引きは「クレジットカード会社の審査を通さずに現金を回収できる手段」でもあります。
上の1つ目と2つ目は、買ってはいけないスマートウォッチの見分け方としてこれまで挙げてきた特徴とほぼ同じです。ジャンルが違っても、危ない店の顔つきは似ています。
受け取る前の最後の砦は、送り状の「依頼人」欄

注文してしまったあとにも、まだ確認できるポイントが1つ残っています。代引きの送り状にある「依頼人」の欄です。
国民生活センターによると、ここに販売業者の名称(会社名・サイト名)ではなく、発送代行業者の名称が書かれていたり、そもそも虚偽の情報が書かれていたりすることがあります。注文した店の名前と、送り状の依頼人が一致しない。これは玄関先で、お金を払う前に気づける唯一のサインです。
心当たりのない荷物であれば、そもそも受け取らないという判断もできます。受け取り拒否は、開封する前なら可能です。
開けてしまうと、宅配事業者に返金は求められない
ここが代引きのいちばん厳しいところです。
代引きでは、宅配事業者に代金を支払って荷物を受け取り、開封して初めて中身を確認することになります。つまりお金を払う前に本物か偽物かを確かめられません。そして支払って開封したあとに偽物だとわかっても、宅配事業者に返金を求めることは困難です。宅配事業者は運んで代金を預かっただけで、商品の中身に責任を負う立場ではないためです。
販売サイトと連絡が取れなければ、そこで手詰まりになります。国民生活センターが2025年8月の注意喚起で「解決が困難となるケースが目立つ」と書いているのは、この構造のことです。
大手通販サイトに出店している販売業者から一方的にキャンセルされ、「代引きで送る」と連絡が来た場合も要注意です。この場合は取引や支払いをせず、その通販サイト側に連絡するよう案内されています。プラットフォームの外に持ち出された取引は、プラットフォームの補償が効かなくなります。
スマートウォッチやガジェットを買うときに効くこと
このデータで増えているのは代引きという「支払い方法」ですが、入口はほとんどSNSや検索結果の広告です。2025年度に相談が45.6%増えた「紳士・婦人洋服」の相談内容を見ると、1位がインターネット通販、2位が電子広告、5位がSNS、6位が連絡不能、8位が代引配達、9位が商品未着、10位が詐欺という並びです。広告から入って、代引きで受け取って、連絡が取れなくなる。この流れが1本の線としてデータに出ています。
対策として現実的なのは3つです。ひとつは、決済手段を選べる店で買うこと。クレジットカードやプラットフォームの決済を通しておけば、トラブル時に相談できる相手が増えます。ふたつめは、少しでも怪しいと感じたら注文しないこと。三つめは、実物を確認できる家電量販店という選択肢を最初から候補に入れておくことです。値段の差がわずかなら、確実性を買うほうが安く済むこともあります。
不安に思ったときやトラブルになったときは、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すると、最寄りの消費生活センター等を案内してもらえます。
まとめ
2025年度、代引配達に関する相談は30,078件で前年度比46.9%増。手口別トップ10のなかで突出した伸びでした。ネット通販に絞った集計では、その半分が偽物や連絡不能で、4件に1件超が外国の関係するものです。
代引きは「前払いして届かない」事故を防いでくれますが、「届いたものが偽物」という事故は防いでくれません。注文前に販売業者の情報と決済手段を確かめ、受け取る前に送り状の依頼人欄を見る。この2つだけでも、防げるものはかなりあります。
Source: 国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(2026年8月5日・PDF)/代引き配達を利用したインターネット通販のトラブルにご注意(2025年8月20日)/偽物が届くインターネット通販トラブルで“代引き配達”の利用が増加しています(2023年4月26日)
グラフはいずれも国民生活センターの公表数値をもとに編集部が作成/イメージ写真はUnsplash(撮影 RoseBox)
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