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スマートウォッチと機械式時計は、長いあいだ別々の世界のものとして語られてきました。そこへスイスの高級時計ブランドであるH. Moser & Cie.(エイチ・モーザー)が、どちらにも寄りきらない一本を出してきました。2026年9月に発表された「Off-Grid(オフグリッド)」です。
見た目は同ブランドの人気コレクション「Streamliner(ストリームライナー)」そのもの。けれど文字盤の中にはデジタル表示が組み込まれていて、クロノグラフやムーンフェイズ、アラームまで動きます。それでいて通知は一切届きません。ここでは公式サイトの情報をもとに、この不思議な一本がどんな時計なのかを整理します。
スイスの高級時計ブランドが、あえてデジタルをつくった
H. Moser & Cie.は1828年創業のスイスの時計メーカーで、ロゴすら入れない「無文字盤」の時計を作るなど、あえて王道を外す発表で知られてきました。今回のOff-Gridもその流れにあります。公式サイトでは「機械式時計なのかスマートウォッチなのか。そのどちらでもない」と説明され、両方の世界に片足ずつ置いた存在だとうたわれています。

画像出典:H. Moser & Cie. 公式サイト
文字盤は中身が透けて見えるスケルトン仕様で、その下に基板が見えています。6時位置にデジタル表示、12時位置には小さなドーム型のフュメダイヤルが載り、ブランドのロゴは透明なラッカーで入れられています。ケースの大きさは直径42.6mm。防水は12気圧(120m相当)で、日常生活で気を遣う場面は少なそうです。
通知は来ない。残したのは必要な機能だけ
Off-Gridがふつうのスマートウォッチと決定的に違うのは、アプリが並んでいないことです。公式サイトは「通知の洪水も、パフォーマンスを競うこともない」と書いていて、機能は生活の役に立つものだけに絞られています。

画像出典:H. Moser & Cie. 公式サイト
搭載されているのは、全タイムゾーンに対応するGMT表示、100分の1秒まで計測できるスプリットセコンドクロノグラフ、パーペチュアルカレンダー、パーペチュアルムーンフェイズ、日の出と日の入りの時刻、アラーム、タイマーです。健康管理やワークアウトの記録は入っていません。歩数や心拍を追いかけたい人向けの時計ではなく、時間にまつわる表示を突き詰めた時計だと考えると分かりやすいと思います。
21言語・10単語の辞書と「OFF-GRID」モード
おもしろいのが、旅先を意識した機能です。国名をすばやく選べる「OFF-GRID」モードに加えて、21の言語について10単語だけを収めた辞書が入っています。

画像出典:H. Moser & Cie. 公式サイト
翻訳アプリがあれば事足りる時代に、あえて10単語。スマートフォンを取り出さずに「こんにちは」だけ伝えられれば十分、という割り切りが感じられます。スマートウォッチの機能を足し算で考えるのが当たり前になっている今、引き算で設計されているのがこの時計の性格をよく表しています。
電池は時刻表示だけなら12か月
毎日の充電が要らないのも、この時計の実用的なポイントです。公式サイトによると、時刻表示だけで使った場合の駆動時間は12か月。時刻表示に加えてアラームを30日分、クロノグラフを4時間使うといった組み合わせ(6時位置のデジタル表示を有効にした状態)でも6か月もちます。
一般的なスマートウォッチが数日から2週間ほどで充電を必要とすることを考えると、桁がひとつ違います。毎晩充電器に載せる習慣が続かなかった人にとっては、ここがいちばん現実的な魅力かもしれません。
ブルーとブラックの2種類
用意されているのは2色です。Ref. 6DI0-1202の「Off-Grid Blue」はステンレススチールにブルーのコンポジットを組み合わせたケースで、12時位置のドームダイヤルはブラック系のフュメ(ブランドの呼称はBlackorフュメ)、ストラップはホワイトのラバー。Ref. 6DI0-1205の「Off-Grid Black」はブラックのコンポジットにレッドフュメのダイヤル、ブラックのラバーストラップという構成です。

画像出典:H. Moser & Cie. 公式サイト
ストラップはケースと一体化したフルインテグレーテッドタイプで、Streamlinerらしい丸みのあるシルエットに収まっています。ムーブメントは、スイスのSequent(セカント)とH. Moser & Cie.が共同開発したキャリバーD10です。英メディアのWatchProによると、Bluetooth Low Energyでスマートフォンとつながり、iOSとAndroidの両方に対応。ケースの厚さは14.4mmと伝えられています。
主な仕様
| 製品名 | Off-Grid Blue(Ref. 6DI0-1202)/Off-Grid Black(Ref. 6DI0-1205) |
| ケース素材 | ステンレススチール+ブルーのコンポジット/ステンレススチール+ブラックのコンポジット |
| 直径 | 42.6mm |
| 防水性能 | 12気圧 |
| 文字盤 | スケルトナイズド+デジタル表示、12時位置にドーム型のフュメダイヤル(Blackorフュメ/レッドフュメ) |
| ストラップ | ラバー(ホワイト/ブラック)、フルインテグレーテッド |
| ムーブメント | キャリバーD10(Sequentとの共同開発) |
| 駆動時間 | 時刻表示のみで12か月/時刻表示+アラーム30日+クロノグラフ4時間の併用で6か月 |
| 主な機能 | OFF-GRIDモード(国選択)、GMT、100分の1秒スプリットセコンドクロノグラフ、パーペチュアルカレンダー、パーペチュアルムーンフェイズ、日の出/日の入り、アラーム、タイマー、21言語10単語の辞書 |
| 限定数 | 各モデル1,000本 |
価格と買える期間
価格は公式サイトの表示で3,900スイスフラン(税別)。WatchProは4,900ドルと伝えています。日本円での販売価格は、現時点では公表されていません。
販売はブティックと公式オンラインストアで、公式サイトによればH. Moser & Cie.がオンライン販売を行うのは今回が初めてとのことです。まず既存の顧客に向けて2026年9月21日から23日まで先行販売され、9月24日13時(中央ヨーロッパ夏時間)から一般向けに開放されます。そして販売期間は2026年10月5日まで。数量だけでなく、買える期間そのものが区切られている点に注意が必要です。
まとめ
Off-Gridは、スマートウォッチが当たり前になった今だからこそ成立する時計だと思います。通知も健康管理も入っていないかわりに、時間にまつわる表示だけを深く作り込み、電池は1年もつ。スマートウォッチに疲れてしまった人や、機械式時計を長く着けてきた人が「もう一本」として選ぶには、納得しやすい形です。似た発想では、愛用の腕時計にスマート機能を足すブレスレット「Smartlet One」のような製品も出てきています。
いっぽうで、価格も数量も期間も限られていて、誰でも気軽に手を出せるものではありません。それでも、高級時計ブランドがデジタルとどう向き合うのかを示した例として、記憶に残る一本になりそうです。
Source: H. Moser & Cie. 公式サイト/WatchPro
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