古川大臣の就任で日本のAI政策はどう変わるのか|医療DXを医療AXへと語り医療情報の2次利用は来年の通常国会を目指す

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夕方の空の下、正面から見た国会議事堂。手前には広い道路が伸びている

2026年9月18日、古川俊治氏がデジタル大臣に就任し、同日13時から就任記者会見が開かれました。デジタル庁が公開した会見要旨によると、今回はこれまで別々だったAI戦略とデジタル政策を1人の大臣が担当する形になっています。

スマートウォッチで毎日の心拍数や睡眠を記録している人にとって気になるのは、健康や医療のデータがこれからどう扱われるのかという点です。会見で語られた方針のうち、読者の生活に近いところから順に整理しました。

AI戦略とデジタル政策を1人で担当する体制になった

古川大臣が拝命したのは、デジタル大臣のほかに次の役職です。

大臣・担当 デジタル大臣/AI・デジタル改革推進担当大臣/サイバー安全保障担当大臣/コンテンツ戦略担当大臣
内閣府特命担当大臣 人工知能戦略/サイバー安全保障/科学技術政策/宇宙政策/海洋政策/知的財産戦略
担当する事務 個人情報保護委員会/原子力政策/サイバーセキュリティ戦略本部/認知症施策本部/グローバル・スタートアップ・キャンパス構想

会見では、高市総理から「社会全体のデジタル化の司令塔として、関係大臣と協力して、全ての国民にAX/DXの恩恵が行き渡る社会の構築をするように」指示を受けたと述べています。AI戦略については、デジタル庁が重点計画2026で示してきたデジタル化の流れに重ねる形で、「日本AX」の柱としてバーティカルAIとフィジカルAIへの官民投資を「強く豊かな日本」投資枠を活用して進めるとしました。

担当が1人にまとまった理由について、古川大臣は会見で「AIとかAIエージェント、こうしたAI技術というものをデジタルの推進とともに繰り広げていく、ここが非常に重要なこれからの課題」だと説明しています。AI政策の進め方については、利点とリスクのバランスを取りながら、安全で付き合いやすいAIをコストパフォーマンスの観点も踏まえて普及させたいとし、変化が激しい分野なのでスピードに乗り遅れないようにしたいとも語りました。

医療DXを医療AXにという言及があった

スマートフォンを手に持って画面を見ている様子のイメージ画像

SWLの読者に最も関係が深いのは、AIの出口として医療を挙げた部分です。古川大臣は会見で、AIの出口としての医療は「極めて幅広いし、実験的にやってみるという意味では非常に導入がしやすい、成果が早くみやすい」とし、「今進めている医療DX、これを医療AXに」という思いを持っていると述べました。

もっとも、会見で語られたのはここまでで、具体的にどの分野から着手するかや、いつまでに何をするかという工程には触れていません。医療の現場でAIがどう使われるようになるのかは、今後の発表を待つ段階です。

なお、健康や医療のデータをめぐる国の枠組みは、すでにパーソナルヘルスレコード(PHR)として整理が進んでいます。スマートウォッチで測ったデータがどの枠組みに当たるのかは、こちらの解説記事で確認できます。

医療情報の2次利用は来年の通常国会を目指す

朝、窓辺で体を伸ばしている人のシルエット。日々の体の記録を振り返る場面のイメージ

会見では、医療等情報の利活用についての質問も出ました。古川大臣は、医療情報の利活用は医薬品や医療機器の開発において極めて重要だとしたうえで、法制度の枠組みについて次世代医療基盤法の改正を視野に入れて検討会で議論を進めていると説明しています。

スケジュールについては、9月中の取りまとめを目指して議論しており、来年の通常国会を目指して進めるとしました。目指す姿としては、患者の権利と利益を保護したうえで、治療のために得た医療情報が2次利用で適切に活用され、その成果が国民に還元されることを挙げています。

不正利用への対応を問う質問もありました。2026年4月に英国のUKバイオバンクで提供情報の不正利用が発覚した件を引き合いに、罰則が検討されているかを聞かれた古川大臣は、現在も次世代医療基盤法のもとで認定事業者は厳しいチェックを受けているとし、UKバイオバンクの事例も含めて検討がなされていると考えていると答えました。罰則の具体的な内容には踏み込んでいません。

ここで押さえておきたいのは、会見で語られたのが「治療のために得た医療情報」だという点です。スマートウォッチやスマートリングが記録した数値がそのまま同じ枠組みで扱われる、という説明は会見ではされていません。手元のウェアラブル端末のデータがどう扱われるかは、これまでの指針や個人情報保護法のルールに沿って考える話になります。

サイバー攻撃への対応も担当する

古川大臣はサイバー安全保障担当大臣も兼ねます。政府はこれまでもなりすまし詐欺広告への対策強化を事業者に要請してきました。会見では、政府の「ガバメントソリューションサービス(GSS)」への不正アクセスについて質問が出ました。

各省庁の職員や、GSSの利用機関の業務に関わった公務員、事業者、個人の個人情報が流出した可能性があるとされている件について、古川大臣は大臣として重く認識していると述べ、現時点で同様の被害につながる事象は確認されていないとしました。対応としては、個人情報が漏洩した可能性がある人に向けた専用の問合せ窓口の設置、外部の専門事業者と協力した原因究明、脆弱性の管理方法の見直し、外部からの接続方法の改善を挙げ、侵入があった場合でも影響を最小限に食い止める対策も強化したいとしています。

医師と弁護士の両方の経歴を持つ

今回の就任では、本人の経歴も話題になっています。本人の公式サイトによると、経歴は次のとおりです。

1987年 慶應義塾大学医学部を卒業し、外科医として勤務。1994年に博士号(医学)を取得
1993年・1996年 病院勤務のかたわら通信教育で学び、慶應義塾大学文学部(社会学)と法学部(法律学)を卒業
1996年・1999年 司法試験に初回受験で合格し、1999年に弁護士登録
ロボット手術 手術支援ロボット「da Vinci Surgical System」を日本で初めて導入し、治験を主導
2005年 英国オックスフォード大学経営大学院に留学し、経営管理学修士号(MBA)を取得
2007年 慶應義塾大学法科大学院教授・医学部外科教授となり、同年7月の参議院選挙で初当選(以後4回当選)

会見でも「医師でございます、また、弁護士でもございます、私の経験を活かしながら、誰一人取り残されない、人にやさしいデジタル世界の実現に向けて力を尽くしてまいります」と述べています。AIの規制と制度の見直しについては、法律はメリットとリスクをどうバランスさせるかという観点で作られているとしたうえで、弁護士としての実務経験を生かしたいとしました。

研究の現場についても、英語を使う国際共同研究が標準になりつつある点や、大学と国の研究機関と民間企業の間で人材交流が進んでいない点を課題に挙げています。

科学技術や宇宙も同じ大臣が担当する

今回の担務には、科学技術政策、宇宙政策、海洋政策、知的財産戦略、コンテンツ戦略も含まれます。会見では、第7期科学技術・イノベーション基本計画に基づく研究力の強化、2030年代の発電実証を目指すフュージョンエネルギー、来年の宇宙基本計画の改定に向けた議論の加速、2033年までに海外売上20兆円を目標とするコンテンツ戦略などに言及しました。

いずれもスマートウォッチの利用から見ると距離のある分野ですが、AIと科学技術を一体で進めるという説明は、医療分野へのAI導入の話とつながっています。

まとめ

就任会見から読み取れるのは、AI戦略とデジタル政策を1人の大臣がまとめて担当する体制になったこと、AIの出口として医療が重視されていること、医療情報の2次利用の法制化が来年の通常国会を目指して進むことの3点です。

いずれも方針の段階で、スマートウォッチで記録したデータの扱いが今すぐ変わるわけではありません。医療情報の2次利用の議論は9月中に取りまとめが予定されているので、その内容が出た時点で、自分のデータがどこに含まれるのかを確認するのがよさそうです。

Source: デジタル庁 古川大臣就任記者会見(令和8年9月18日)古川俊治 公式サイト プロフィール
画像: Smart Watch Life 編集部撮影/Unsplash(フリー素材)

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