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スマートウォッチが運動後に表示する消費カロリーは、実際に使ったエネルギーより多めに出ている。そうした結果を示す研究が、査読誌『PLOS ONE』に掲載されました。フロリダ国際大学のチームが58人に4機種を着けてもらい、呼気を測る装置の値と1件ずつ突き合わせたものです。
誤差の中央値はおよそ15〜25%。さらに目を引くのが、体脂肪率が高い人ほど誤差が大きくなるという関係が、試した4機種すべてで確認されたことです。体脂肪率の高い参加者では、誤差が50%から100%以上に達することもありました。
論文の掲載は2026年7月29日付で、9月21日に著者本人による解説と報道が相次いで出ています。論文と著者の解説をもとに、何がどこまで分かったのかを整理します。
4機種を両手首に着けて呼気の測定と突き合わせた
研究を行ったのは、フロリダ国際大学のMedical Photonics Laboratoryを中心としたチームです。米国立科学財団(NSF)の助成を受けています。
参加者はマイアミに住むヒスパニック系の成人58人(女性31人・男性27人)。平均年齢は23歳、平均BMIは29.73でした。BMI30未満が33人、30以上が25人と、体格に幅を持たせて集められています。
参加者はApple Watch Series 8・Garmin Forerunner 955・Samsung Galaxy Watch5・Fitbit Sense 2の4機種を、両手首に2つずつ着けて運動しました。どの機種をどの位置に着けるかは順番を入れ替えて割り当てており、装着位置による有利不利は出ていません。
運動は背もたれのあるリカンベントバイクで、2分間を5本。中強度(最大心拍数の64〜76%)が3本、高強度(同77〜95%)が2本で、運動時間は合計10分です。ペダルの回転数は毎分85回に保ち、目標の心拍になるよう負荷を調整しています。前後には5分の安静をはさみました。
比較の基準に使ったのは、COSMED K5という携帯型の代謝測定装置です。マスクを着けて吸った空気と吐いた空気を1呼吸ごとに分析し、そこからエネルギー消費量を割り出します。運動科学ではもっとも信頼できる測り方とされています。
リカンベントバイクを選んだのは、運動の強さを厳密に管理できるうえ、手首の動きが少なく心拍の計測が乱れにくいからです。スマートウォッチにとっては、条件のよい環境で測られたことになります。
指標ごとの信頼度を整理したレビュー論文では、消費カロリーは誤差が±10〜20%を超えることが多いとまとめられていました(その数字は測定値か、推定値か|ミシガン大などのレビュー論文がスマートウォッチ15指標の信頼度を整理、消費カロリーは誤差±10〜20%超【研究レポート】)。今回はその誤差が誰に大きく出るのかを、実測で調べたものです。
誤差の中央値は15〜25% 3ブランドは多めに表示していた

結果から書くと、4機種とも基準の値から大きく外れました。誤差の大きさは機種によって平均80〜110キロカロリー、割合に直した誤差の中央値はおよそ15〜25%です。誤差の分布は右に裾を引いているため、論文は割合の誤差については中央値を示しています。
方向にも偏りがありました。Apple・Garmin・Samsungの3社は、そろって実際より多めに表示していました。なかでもAppleは偏りがもっとも小さく、GarminとSamsungは大きく上振れしています。
| 機種 | この研究で出た平均の偏り |
|---|---|
| Apple Watch Series 8 | 21.6キロカロリー多め 95%信頼区間 11.6〜31.6 3社のなかでは偏りが最小 |
| Garmin Forerunner 955 | 68.6キロカロリー多め 95%信頼区間 53.3〜83.9 上振れがもっとも大きい |
| Samsung Galaxy Watch5 | 56.8キロカロリー多め 95%信頼区間 45.1〜68.4 |
| Fitbit Sense 2 | 外れ値を除くと3.1キロカロリー 95%信頼区間 −9.0〜15.2で偏りははっきりしない ただし異常値が7件 |
Fitbitだけは事情が違います。平均の偏りは3.1キロカロリーと小さく見えますが、これは明らかにおかしい値を除いたあとの数字です。Fitbitは基準値の450%を超える推定値を7件出しており、これはFitbitの試行のおよそ13%にあたります。この7件を含めて計算し直すと平均の偏りは128.6キロカロリーになり、4機種でもっとも大きくなります。カロリーの推定値がそもそも出てこなかった回もありました(Fitbit 1回、Samsung 2回、Garmin 1回、Apple 0回)。
体脂肪率が高い人ほど誤差が大きくなった
この研究でいちばん新しいのは、誤差が誰に大きく出るのかに踏み込んだところです。
解析の結果、体脂肪率が高いほど割合の誤差が大きくなる関係が、4機種すべてで確認されました。機種によって傾きは違い、AppleよりもFitbitとGarminのほうが、体脂肪率の上昇にともなう誤差の増え方が急でした。
著者の解説によれば、体脂肪率が高い参加者では誤差が約50%から100%以上になることもありました。実測が100キロカロリーだった運動で、50%の過大評価なら約150キロカロリー、100%なら約200キロカロリーが画面に出る計算です。
なぜそうなるのかは、この研究からは特定できていません。著者は、推定アルゴリズムの作り方や較正の影響もありうるとしたうえで、各社のアルゴリズムが非公開なので中身は分からない、と書いています。共著者のEkaterina Oparina氏は、アルゴリズムが痩せた人のデータをもとに作られてきたことも一因かもしれない、との見方をThe Washington Postに述べています。
論文の考察でも、同じ方向の可能性が挙げられています。心拍と動きからエネルギー消費を割り出すモデルの多くは痩せた人を中心に較正されており、体脂肪率が高い人の血流の状態や体組成、動きの効率の違いを織り込めていない、というものです。手首まわりの軟らかい組織が運動中に揺れやすいことや、較正に使うデータに体脂肪率の高い人が少ないことも、誤差を大きくしている可能性があるとしています。
機種による違いも、数字で示されています。体脂肪率が参加者の平均だった場合のモデル上の誤差の大きさは、Apple 25.15キロカロリー、Fitbit 18.82キロカロリー、Garmin 47.86キロカロリー、Samsung 40.98キロカロリーでした。体脂肪率が上がるにつれて誤差はどの機種でも大きくなり、その増え方はAppleよりGarminとSamsungのほうが急でした。
なお、時計が体脂肪率そのものをどう出しているかは、また別の話になります(Galaxy Watchの「体組成」とは? 体重と身長は手動入力、時計が測るのは骨格筋量と体脂肪率|測り方のコツと「DEXAと相関98%」の読み方)。
週4時間の運動なら1週間で1,200〜2,400キロカロリーのずれになりうる

1回の運動で50キロカロリーや100キロカロリーの誤差なら、大した話ではないように思えます。ただ、これは積み上がります。
著者が挙げている例はこうです。体脂肪率が35%以上の人が週に4時間運動すると、1週間で1,200〜2,400キロカロリーのずれになりうる。ほぼ1日分の食事に相当する量です。表示された消費カロリーを目安に食べる量を決めていると、消費したつもりの分をそのまま食べてしまうことになります。
体脂肪率が高い人ほど、減量のためにウェアラブル端末を使いたいと考えることが多い。にもかかわらず、その人たちがもっとも精度の低い推定を受け取っているかもしれない。これが著者の指摘です。
同じ4機種でも心拍の誤差は2〜4bpmに収まっていた
同じチームは、同じ参加者と同じ運動のやり方で心拍数の精度も検証しており、その結果は査読誌『Sensors』に別の論文として出ています。
こちらでは、胸に着けた心電計(Polar H10)を基準にした平均の誤差が、Apple 2.51bpm、Garmin 2.93bpm、Samsung 3.38bpm、Fitbit 3.89bpmでした。割合に直すと2〜4%で、消費者向けウェアラブルの試験規格ANSI/CTA-2065が合格の目安にしている「±5bpm・±10%以内」に収まっています。
ただし完全に正確という話ではありません。論文は4機種とも基準からの系統的なずれがあったとしたうえで、BMIが高い人や肌の色が濃い人(Fitzpatrick V型)では誤差のばらつきが広がる傾向があったと報告しています。
手首でとらえやすい信号は実用になる水準にあり、そこから計算でつくる消費カロリーは別物。運動科学者が以前から指摘してきた内容とも重なります(運動科学者が指摘するスマートウォッチの健康データの限界。主に6つの嘘をついている?【海外研究紹介】)。
消費カロリーが低く出るという話と矛盾しないのか
ここで引っかかる方もいると思います。スマートウォッチの消費カロリーは低く出る、という話を聞いたことがあるかもしれません。今回の研究は逆に、多めに出ると言っています。
これは比べているものが違います。
低く出るというときに問題になるのは、1日の総消費エネルギーです。1日の消費は基礎代謝・食事誘発性熱産生・身体活動の3つでできていて、手首のセンサーは食べることで生じる消費や、歩数に現れない細かな生活動作を拾えません。そのぶん総量が小さく出ます(スマートウォッチの消費カロリーはなぜ低く出るのか? 厚労省の内訳と実測データで検証)。
今回の研究が測ったのは、運動している間の活動エネルギー消費だけです。10分間バイクを漕いだあいだに何キロカロリー使ったか、という値を呼気の測定と比べています。この部分に限ると、多めに出ていた。
どちらも同じ機械の話ですが、1日の合計は足りず、運動の1回分は盛られている。そう整理しておくと混乱しません。
この研究から言えないこと
数字の受け取り方には、いくつか条件がつきます。
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 参加者 | マイアミ在住のヒスパニック系58人 平均年齢23歳と若く、ほかの年代や集団にそのまま当てはまるとは限らない |
| 運動の種類 | 背もたれのあるリカンベントバイクのみ ランニングや筋力トレーニングでどうなるかは調べていない |
| 機種の世代 | Apple Watch Series 8・Garmin Forerunner 955・Galaxy Watch5・Fitbit Sense 2 いずれも現行より前の世代で、最新モデルの精度を示すものではない |
| 肌の色 | Fitzpatrick III〜V型のみ V型は4人と少なく、著者も慎重な解釈を求めている |
| 運動の回数 | 1人1回の運動だけ 使い続けるうちに時計が本人に合わせて推定を調整していく効果があるとしても、それは測れていない |
| 計測した区間 | 運動前の安静5分と運動後の回復5分も含めて、時計の室内サイクリングのモードを動かしていた 漕いでいない時間も含むため、とくに割合で見た誤差に影響した可能性がある |
| 同時に着けた台数 | 1人が両手首に複数の時計を着けていた 締め付けやセンサーの当たり方に影響した可能性は否定できない(左右の割り当ては順番を入れ替えて偏りを抑えている) |
| 肌の色の測り方 | 本人の申告によるFitzpatrickの分類 色差計や分光による画像計測も試したが、この実験の条件では安定した値が取れず使っていない |
肌の色については、今回の条件では消費カロリーの誤差に有意な影響が見られませんでした。ただしこれは、肌の色は関係ないと結論できる話ではありません。検証した範囲が限られているためです。心拍のほうの論文では、Fitzpatrick V型で誤差のばらつきが広がる傾向が報告されています。
機種の世代についても一言添えておきます。試されたのは数年前に発売されたモデルで、各社はその後もセンサーとアルゴリズムを更新しています。今回の数字をそのまま最新モデルに当てはめることはできません。
表示されるカロリーをどう使えばいいか

著者が読者に向けて書いている助言は、次の3つに整理できます。
| 助言 | 中身 |
|---|---|
| カロリーは推定値として扱う | 直接測った値ではなく、心拍と動きと入力した身体情報から計算した予測値 |
| 減量の食事管理に直結させない | 表示された消費カロリーを根拠に、食べる量や運動の成否を決めるのは控えめに |
| 一貫した数字が正確な数字とは限らない | 系統的に多めに出る機械は、毎回同じようにずれるので一貫して見える |
3つ目は見落としやすいところです。毎回だいたい同じ数字が出ると、信頼できるように感じます。ですが、いつも同じだけ上振れしている機械も、同じように一貫して見えます。ぶれの小ささは正確さの証明にはなりません。
そのうえで、著者は使いみちがないとは言っていません。運動した時間・距離・ペースは役に立ちますし、心拍もこの研究の範囲では実用になる水準でした。数字そのものより、自分のなかでの増減を追う。体重の変化や運動のきつさの実感と一緒に見る。この読み方なら意味を持ちます。
論文も、消費カロリーの絶対値の精度が低いからといって、同じ人のなかでの変化を追う使い方が役に立つ可能性まで否定されるわけではない、と書いています。そのうえで、ふだんの生活の条件で改めて確かめる必要があるとしています。
各社が出している回復度やコンディションのスコアにも、同じ距離の取り方が要ります(Apple Watchの「準備度(レディネス)」とは何か|0〜10のスコアの中身と、各社バラバラな呼び名・尺度、そして信じすぎてはいけない理由)。
論文が挙げる改善の方向
論文は、体脂肪率が高い人ほど誤差が大きいという結果を受けて、端末やアルゴリズムの改善が必要だとしています。挙げられている方向は3つです。
ひとつは、推定モデルを学習させるデータを、体脂肪率・性別・年齢で分けて用意すること。ふたつ目は、いまどんな運動をしているかを見分ける精度を上げ、運動の種類ごとにエネルギー消費を計算すること。三つ目は、複数の波長の光を使う光学式センサーや皮膚の温度など、別の種類のセンサーを組み合わせることです。
まとめ
論文の結論ははっきりしています。いまの消費者向け機器は、個人にとっても研究にとっても、信頼できるカロリー計測を提供できていない。体格の違う人たちに対して精度を上げることが、臨床や公衆衛生の場で使うためには欠かせない。そう書かれています。
厳しい書き方ですが、スマートウォッチが役に立たないという話ではありません。手首の光学式センサーで取れる心拍のような信号と、そこから計算でつくる消費カロリーとでは、期待してよい精度がまったく違うということです。
そして今回はっきりしたのは、そのずれ方が人によって違うことでした。体脂肪率が高い人ほど大きくずれる。減量のためにその数字をいちばん頼りにしたい人が、いちばん当てにならない数字を見ているかもしれない。次の世代の端末に求められるのは、新しいセンサーだけではなさそうです。
Source:Kostrna J, Oparina E, Palacios C, Rodriguez AJ, Pei J, Ajmal A, et al. (2026) Body fat, skin tone, and the accuracy of smartwatch caloric expenditure estimates, PLOS ONE 21(7): e0353261 / The Conversation / The Washington Post / 心拍の検証は Sensors 2026, 26(10), 2922
記事内の画像はいずれもUnsplashのフリー素材です。
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