「AIで稼げる」講座の相談が5年で3倍に|国民生活センターが注意喚起、Web会議での勧誘はクーリング・オフの対象になる場合も

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白背景に開いたノートPCとヘッドホン・ワイヤレスマウス

「AIを使えば副業で稼げる」という広告から高額な講座を契約してしまう、というトラブルが増えています。国民生活センターは2026年9月16日、AI講座やSNS運用講座といった「ビジネス講座」をめぐる相談が増え続けているとして、注意を呼びかけました。

相談件数は2020年度の1,169件から2025年度は3,551件へと、5年で約3倍になっています。金額も小さくありません。事例には、80万円のAI動画講座を36回払いで契約したケースや、副業の面接だと思って参加したWeb会議で65万円の講座契約になっていたケースが並びます。

AIに興味があって情報を集めている人ほど、こうした広告に出会いやすい状況です。何が起きているのか、どこで気づけるのかを整理します。

相談は5年で3倍、いま過半数が「Web会議での勧誘」

国民生活センターが公表したデータでは、相談件数と契約金額の両方が増えています。

ビジネス講座に関する相談件数と平均契約購入金額の推移を示したグラフ。相談件数は2020年度1,169件から2025年度3,551件に増加し、電話勧誘販売の平均契約金額は60万円から87万円に上がっている

相談件数は5年で3倍に。電話勧誘販売の平均契約金額は通信販売より高い(図:国民生活センター)

年度 相談件数 電話勧誘販売の平均契約額 通信販売の平均契約額
2020年度 1,169件 60万円 44万円
2021年度 1,831件 69万円 47万円
2022年度 2,106件 84万円 59万円
2023年度 2,510件 88万円 57万円
2024年度 2,682件 99万円 64万円
2025年度 3,551件 87万円 64万円

2026年度も、7月31日までの登録分で1,121件と、前年の同じ時期(821件)を上回っています。

注目したいのは、契約のきっかけが変わってきたことです。

ビジネス講座の販売購入形態の割合推移を示した積み上げグラフ。電話勧誘販売の割合が2020年度11.4%から2025年度51.0%へ増えている

Web会議での勧誘を含む電話勧誘販売が、5年で11.4%から51.0%へ(図:国民生活センター)

以前はSNS広告を見て、そのままネットで申し込む「通信販売」が中心でした。しかし、Web会議サービスで説明を受けてから契約する形が急増し、この形を含む「電話勧誘販売」は2020年度の11.4%から2025年度には51.0%と、過半数を占めるまでになりました。

そして電話勧誘販売の平均契約額は、通信販売より一貫して高額です。人と直接話す場で勧められるほうが、金額が大きくなりやすいということです。

実際の相談事例:AI講座で何が起きているか

報告書には4つの相談事例が載っています。そのうちAIに関わる3つを紹介します(番号は報告書のものです)。

事例1:月2万2,000円のつもりが、1年契約だった(40歳代女性・2025年11月受付)
SNS広告からメッセージアプリへ誘導され、3時間の説明会に参加してオンラインAI講座を契約。月謝払いで約2万2,000円だったが、2カ月受講して内容が期待した水準ではないと感じ解約を申し出たところ、「1年契約なので解約手数料として残りの月数の受講料の40%が必要」と言われた。

事例2:80万円を36回払いで契約(20歳代男性・2026年5月受付)
「AIを使って副業で稼ぐ」というSNS広告から1万円の情報商材を購入したところ、上位プランを勧誘された。Web会議で1対1で2時間ほど説明を受け、「講座代は1、2カ月ですぐに取り戻せる」などと案内されて約80万円のオンラインAI動画講座を契約。クレジットカードの限度額が足りず、36回払いの個別クレジットを組んだ。動画を見ても儲かるとは思えず、月々の支払いも困難になった。

事例4:副業の面接が、65万円の契約になっていた
大手求人サイトから応募し、2次面接までWeb会議で進んだところ、「副業するにはAIの知識が必須で有料研修が必要」と言われた。月額2万円ほどなら稼ぎながら払えると思って契約したが、電子契約書には総額65万円と書かれていた。説明時に見せられた画面には、支払回数と総額が薄い字で書かれていた。

いずれも、AIというテーマそのものが怪しいわけではありません。問題は、説明の場で示された「月額」と、契約書に書かれた「総額」が大きく違うという点です。

見落としやすいのは「総額」と「解約条件」の2つ

国民生活センターは問題点を4つ挙げています。広告や勧誘と実際の講座内容が違うこと、事前説明のないまま勧誘され金額も高額になること、クレジット契約で高額な契約を結ばせること、そして解約条件が説明されていないか厳しいことです。このうち契約前に自分で確認できるのは、主に次の2点です。

1つめは総額です。月2万円でも36回払いなら72万円、月2万2,000円の1年契約なら26万4,000円になります。月々の負担額だけで判断すると、総額が視野に入りません。報告書でも、「受講料は月額〇円」と説明されても実際は長期契約で、総額が数十万円から100万円を超える例が散見されると指摘されています。

2つめは解約条件です。事例1のように高額な解約手数料が設定されていることがあります。報告書の事例3(SNS広告から約20万円の副業スクールを契約したケース)では、解約できる期間が制限されているうえ、「提供される動画コンテンツをおおむね最後まで視聴していること」という条件まで付いていました。契約前に、解約の方法、解約料の有無、返金条件まで確認する必要があります。

Web会議での勧誘は、クーリング・オフの対象になる場合がある

ここが今回の発表でいちばん実用的な部分です。

国民生活センターは、Web会議や電話で事業者とやりとりする中で有料講座を勧められて契約した場合や、「この講座を受ければ仕事を提供するので収入が得られる」などと勧誘されて契約した場合には、クーリング・オフの対象となる場合があるとしています。

さらに、次の点も明記されています。

・特定商取引法に定める契約書面が交付されていないときも、クーリング・オフが可能
・ビジネス講座の契約でも、契約時点で実際に事業を行っていない場合など、実態として「消費者」に当たるならクーリング・オフができる場合がある
・不当な解約料など、消費者に一方的に不利な条項は、消費者契約法によって無効となる場合がある

事例4のように「事業者間の契約だから解約できない」と言われたケースでも、あきらめる前に相談する価値があるということです。判断に迷ったら、消費者ホットライン「188」(いやや!)に電話すると、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。相談先は、国民生活センターが9月に開設した消費者トラブル解決ナビからも探せます。

学ぶなら、まず公的な制度と無料の教材から

報告書は、スキルアップのための情報を集めるときは公的な支援制度も検討するよう勧めています。具体的に挙げられているのは次の2つです。

厚生労働省の教育訓練給付金 指定講座検索システム

経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業

どちらも支援を受けるには一定の要件を満たす必要がありますが、「いきなり80万円」の前に見ておく価値はあります。無料で学べる教材は、国・大学・企業が公開している実践教材のまとめでも紹介しています。

スマートウォッチやスマホから始めるAIは、ほとんどが無料

もう1つ、AIを学びたい人に伝えておきたいことがあります。いま手元にある端末で試せるAI機能の多くは、本体の機能として提供されています。

iPhoneやApple WatchのApple Intelligence、Galaxyやスマートウォッチ各社のAI機能がこれにあたります。文章の要約、翻訳、写真の編集、音声入力の精度向上といった機能が、すでに毎日の操作の中に入っています。

ただし、無条件に使い放題というわけではありません。Appleは、サーバー側で処理する一部の機能に1日あたりの使用回数の上限があり、上限を超える分のアクセスは今後有料で広げる予定だとしています。それでも、月数万円の講座を契約する前に試せる範囲は十分にあります。

「AIで何ができるか」を体感するだけなら、80万円の講座を契約しなくても、手持ちの端末とアプリで十分に始められます。そのうえで足りないと感じた部分を、公的な講座や書籍で補うほうが順序として安全です。

まとめ

ビジネス講座のトラブル相談は5年で3倍に増え、そのきっかけはSNS広告からWeb会議での勧誘へと移っています。Web会議で勧められる契約は金額が高くなりやすく、月額表示の裏で総額が数十万円から100万円を超えることもあります。

確認すべきは、総額と解約条件の2点です。そして、その場で契約を決めないこと。「今日なら特典が付く」と急かされたときほど、いったん止まるのが安全です。

もう契約してしまった場合でも、Web会議での勧誘ならクーリング・オフの対象になる場合があります。契約書面をもらっていないときも同じです。迷ったら188に電話してください。

Source・画像出典: 国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日公表)

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