Apple Watch Series 12の発表を日本語版・英語版・基調講演の3つで読み比べた|日本語では触れられていない5つの機能と、精度が上がった本当の理由

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ラディアントゴールドチタニウムのApple Watch Hermès Series 12に、黒のサテン・クルー・ド・セルストラップを組み合わせたところ

Apple Watch Series 12の発表資料を、日本語版のプレスリリース、英語版のプレスリリース、そして基調講演の3つで読み比べてみました。同じ製品の同じ発表なのに、見えてくる景色がかなり違います。

結論から書くと、日本語版だけを読んでいると、今年のApple Watchで何が変わったのかは半分も分かりません。日本語版に載っていない機能が5つあり、そのうえで「なぜ精度が上がったのか」という説明は英語版にも載っていませんでした。

3つのソースで、書いてある量が違う

ソース そこにしか書かれていないこと
日本語版プレスリリース 製品、価格、発売日。日本で使える機能と、日本で使えない機能の注釈
英語版プレスリリース Live Rewind、Siri Recap、Health Age、Longevityタブ、Quest Diagnostics連携
基調講演 なぜそうなったのか(センサーの作り直し、精度検証の設計、チップの構造)

順に見ていきます。

日本語版に載っていない5つの機能

日本語版と英語版の全文を突き合わせたところ、英語版にあって日本語版にない固有機能名が5つありました。Apple Watch Ultra 4のプレスリリースでも同じ5つが落ちています。

機能 内容 提供条件
Live Rewind デジタルクラウンをダブルプレスすると、直前15秒の会話がテキストで出る 2026年後半にベータ。英語から。Apple Intelligence対応のiPhone 16以降(16eを除く)が必要。EUでは当初提供なし
Siri Recap 会話のあと、Apple Intelligenceがタイトルと要点を自動でまとめる 同上
Health Age Apple Watchの指標から、実年齢に対して自分がどの位置にいるかを示す 刷新ヘルスケアアプリ。2026年後半、まず米国英語
Longevityタブ 心臓、睡眠、メンタル、運動機能、代謝、聴覚、栄養の7領域を長期で追う 同上
Quest Diagnostics連携 50超のバイオマーカーの血液検査を119ドルでアプリから予約 米国のみ

さらに、ヘルス&フィットネスに関するプレスリリース1本は、日本語版そのものが存在しません。英語版のURLはありますが、日本語のスラッグは404を返します。

なぜ落ちているのか

5つには共通点があります。いずれも「まず英語から」提供される機能です。

日本語版のプレスリリースは、日本で当面使えないものを載せていない、という編集方針に見えます。読者に誤解を与えない配慮としては筋が通っていますが、結果として「今年のApple Watchでいちばん新しい機能群」が丸ごと消えていることになります。

Apple Watch Series 12のサウンド認識が、ドアベルの音を検知したことを画面で知らせている

日本語版でオーディオインテリジェンスとして紹介されているのは、サウンド認識(サイレンやアラーム、ドアベル、赤ちゃんの泣き声などを検知して知らせる)とShazam(周囲の曲を判別する)の2つだけです。

Apple Watch Series 12のスマートスタックに、Shazamが判別した曲名とアーティスト名が表示されている

英語版を読むと、オーディオインテリジェンスはLive Rewind、Siri Recap、サウンド認識、高速化したShazamの4つで構成されていることが分かります。日本語版はその半分だけを紹介していたわけです。

基調講演でしか語られなかったこと

ここからは、英語版のプレスリリースにも載っていない話です。

センサーは3か所が作り直されていた

心拍数センサーが見えるApple Watch Ultra 4の背面。新しい光学式心拍センサーと電気心拍センサーを搭載する。
再設計されたヘルスセンシングシステムで5秒ごとに心拍数を測定する。

新しいヘルスセンシングシステムについて、プレスリリースが触れているのは「より大きく、電力効率に優れたグリーンLED」だけです。基調講演では、3つの要素を改善したと説明されていました。

ひとつ目は、同じ小さな筐体のまま、電極の表面積を広げたこと。心電図を測るときの肌との接触をよくするためです。

ふたつ目は、フォトダイオードをリング状に並べ直したこと。光をより効率よく捉えるための再設計です。

3つ目が、プレスリリースにも出てくるグリーンLEDの大型化。体が動いている最中でも一日中正確に測れるようにするためのものです。

つまり精度が上がった理由は、光を出す側だけでなく、受ける側と電極にもあるということになります。プレスリリースだけでは、そこが分かりません。

「もっとも正確」を、どう検証したのか

日本語版・英語版とも、精度については「1,000人を超える参加者を対象とした科学的に厳密な調査で、主要なウェアラブルと比較した」という書き方です。何と、どう比べたのかは書かれていません。

基調講演では、検証の設計まで説明がありました。心電図のチェストストラップを基準にして、数百人の参加者がランニング、サイクリング、HIITを行いながら、ほかのウェアラブルと直接比較したとのことです。

肝は止まっているときではなく、動いている最中を比べたという点です。光学式心拍センサーがいちばん外すのは運動中なので、そこを条件に選んだのなら、主張としては筋が通っています。

S11チップの中身

ダークブロンズのミラネーゼループを組み合わせたApple Watch Series 12が2台。手前は背面の光学式心拍センサーが緑に光り、奥は心拍数アプリで62 BPMと2分間の履歴を表示している

音声機能を支える構造についても、基調講演のほうが具体的でした。S11チップには電力効率に優れた常時稼働プロセッサがあり、その中のSecure Exclaveに置かれた専用のオーディオバッファーが、処理用の生の音声だけを安全に扱います。

CPU、GPU、Neural EngineはいずれもA20 Pro由来で、Apple史上もっともパワフルなウェアラブル向けチップだとしています。同じ日に発表されたiPhone 18 Proと同じ世代のシリコンを共有していることになります。

測定頻度の「何倍」

日本語版には「一日を通して5秒ごと」とだけあります。基調講演では、これが従来の60倍の頻度だと説明されました。5秒×60=300秒、つまり従来はおよそ5分おきだった計算になります。

HRVについても、日本語版は「最大24倍の頻度」という書き方ですが、基調講演では最短5分ごとという具体的な間隔が示されています。

価格は据え置きだと言っていた

もうひとつ、基調講演でだけはっきり語られたのが価格です。Series 12は399ドル、Ultra 4は799ドルで、いずれも価格据え置きと説明されました。

日本の価格はSeries 12が71,800円、Ultra 4が142,800円ですが、これは前世代のいまの価格と同じです。日本では2026年7月18日に価格改定があり、その時点でSeries 11は64,800円から71,800円へ、Ultra 3は129,800円から142,800円へ上がっていました。値上げは7月に済んでいて、9月の新モデルはその価格を引き継いだということになります。米国が据え置きだという情報とセットで見ると、7月の改定が円安を受けた日本限定のものだった、という筋が見えてきます。

結局、日本のユーザーは何が使えるのか

3つのソースを合わせると、こう整理できます。

いつ使えるか 何が
9月18日の発売から 一日中5秒ごとの心拍測定、最短5分ごとのHRV、準備度スコア、日中バイタル値、セラミックケース、Ceramic Shield 2
9月15日から watchOS 27(Series 9以降・SE 3・Ultra 2以降)、生理周期記録の閉経周辺期・閉経期への対応
英語に設定すれば Siri AI(9月15日からベータ)。日本語対応は10月
2026年後半・英語から Live Rewind、Siri Recap(iPhone 16以降が必要)/刷新ヘルスケアアプリ、Health Age、Longevityタブ
当面使えない 高血圧パターンの通知(追加承認を申請中、来年予定)/Quest Diagnostics連携(米国のみ)

買う前に知っておきたいのは、いちばん下の行です。高血圧パターンの通知は、日本では初期段階ではSeries 12とUltra 4で利用できません。 これは日本語版のプレスリリースの注釈に明記されています。日本語版が省いているのは「英語先行の新機能」であって、都合の悪い情報を隠しているわけではない、という点は公平に書いておきます。

なぜ、こういう差ができるのか

Appleは各国語版のプレスリリースを、単なる翻訳としては作っていません。その国で提供される内容に合わせて編集しているように見えます。

日本語版がLive RewindやHealth Ageに触れないのは、日本語で使えるようになる時期が示されていないからでしょう。読者が「買えばすぐ使える」と誤解しないための配慮とも言えます。

ただ、それによって製品の設計思想そのものが伝わりにくくなっているのも事実です。今年のApple Watchは、心拍を細かく測って、その日の調子を出し、長期の傾向を読む、という流れで作られています。Health AgeとLongevityタブが抜けると、この流れの後半が見えません。

そして基調講演は、プレスリリースが書かない「なぜ」を語ります。センサーの3か所を作り直した話も、動きながら比較試験をした話も、製品を評価するうえでは価格や発売日と同じくらい重要な情報です。

まとめ

同じ発表を3つのソースで読み比べると、それぞれの役割がはっきりします。

日本語版は「日本で何が買えて、何が使えるか」を教えてくれます。英語版は「製品として何が入っているか」の全体像を示します。基調講演は「なぜそう作ったか」を語ります。

3つそろえて初めて、今年のApple Watchの輪郭が見えました。Series 11から何がどう変わったのかは、こちらで項目ごとに並べています

来年の9月も、おそらく同じ構造の差が生まれます。新機能が英語から始まる限り、日本語版のプレスリリースは毎年いくつかの機能を落とすことになるからです。

Source: Apple Newsroom(日本語版・Apple Watch Series 12)Apple Newsroom(英語版)Apple Newsroom「Apple advances health and fitness capabilities using Apple Intelligence」/2026年9月9日の基調講演。記事中の画像はApple提供

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