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2026年1月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が使うスマホの背面カメラに赤いテープのようなものが貼られている写真が、各国のメディアで取り上げられ話題になりました。2月22日には、その写真4枚をまとめたXのポストが投稿され、1万件を超える「いいね」を集めました。
なぜカメラをふさいでいるのか。報道では「撮影を防ぐため」「ハッキングでカメラを勝手に起動されないため」という説明が出ていますが、イスラエル政府や首相府が理由を公式に説明した記録は見つかっていません。報道から推測できるもっともな理由と、まだ断定できないことを分けて整理し、ふつうのスマホ利用者がカメラをふさぐと何が防げて何が防げないのかもまとめます。スマホやスマートウォッチから情報が漏れる仕組みは、情報漏洩のリスクと対策を実例で解説した記事でも紹介しています。
Xのポストは首相のスマホを4枚の写真で並べた
話題になったのは、The Father(@_FIRE_STICK_)さんが2026年2月22日に投稿した次のポストです。
Dem know plenty things we no know!
— The Father (@_FIRE_STICK_) February 22, 2026
本文はくだけた英語で、意味は「あの人たちは、私たちの知らないことをたくさん知っている!」です。ポストの文章はこの1文だけで、カメラをふさぐ理由には触れていません。
添付された画像は4枚の写真を1枚にまとめたものです。上の2枚は、駐車場のような場所で車のそばに立ち、スマホを耳に当てて通話している場面とその拡大です。下の2枚は、議場のような場所の席に座り、手元のスマホを持っている場面とその拡大です。撮影した日や場所は、ポストには書かれていません。
写真では背面カメラの部分に赤いシールのようなものが貼られている
拡大写真を見ると、上下どちらのスマホも、背面のカメラがある部分に赤いシールのようなものが貼られています。上の写真のスマホは黒いケースに入っていて、赤いもの以外にもいくつかのシールが貼られているように見えます。下の写真のスマホは透明なケースに入っています。
写真から分かるのはここまでです。貼られているのがふつうのテープなのか、はがすと跡が残る専用のシールなのか、レンズを完全に覆っているのかは、写真からは判断できません。
有力な理由は撮影の防止とハッキングによるカメラの遠隔起動対策
報道で挙げられている理由は、大きく分けて2つです。どちらも政府の発表ではなく、報道や専門家の見方として伝えられているものです。
1つ目は、機密に関わる場所で写真が撮られるのを防ぐためとみられることです。ヨルダンのJordan News(2026年1月27日)は、テープは機密性の高い場所でのスパイ行為や会話の記録を防ぐための安全対策とみられると伝え、専門家の見方として、無許可の撮影やデジタルな監視のリスクを減らす予防策になりうると紹介しています。同紙は、ほかの政治家や治安当局者も以前から似た対策をとってきたとも書いています。英国のThe Tab(2026年2月26日)も、議会の機密エリアでは撮影が禁じられており、カメラをふさげばうっかり撮ってしまうことも物理的に防げる、と説明しています。
2つ目は、スマホを乗っ取られてカメラを勝手に起動されるのを防ぐためとみられることです。サウジアラビアのOkaz(2026年1月27日)は、イスラエル紙マアリブの報道として、テープは撮影禁止の場所で撮らないためではなく、スマホがハッキングされ、持ち主の知らないうちにカメラを起動されるのを防ぐ目的だと伝えています。同じ記事では、軍や安全保障に関わる施設では、職員も訪問者も入口でカメラにテープを貼るよう求められているとも書かれています。
スマホのカメラが知らないうちに使われる心配は、首相のような立場の人だけの話ではありません。ネットにつながるカメラの映像が外に漏れる問題では、総務省がネットワークカメラのセキュリティ設定を見直すよう注意を呼びかけています。
首相府は理由を説明しておらず「議会の標準手順」も裏付けがない
ここからは、いま出回っている説明のうち、断定できないことです。
理由についての公式な説明は見つかっていません。上で紹介した記事はいずれも「専門家によると」「〜とみられる」という書き方で、イスラエル政府や首相府が理由を説明したという記述はありません。2つの理由のどちらが正しいのか、両方なのかも分かっていません。
「議会や公務員の標準的な手順」かどうかも確認できていません。The Tabの記事は、貼られているのは「改ざん検知シール」で、議会の機密エリアでの安全対策だと説明していますが、根拠として名前を挙げているのは別のメディア(Hypefresh)だけです。Okazが伝えた「軍や安全保障施設の入口でカメラにテープを貼る」という運用も、施設の話であって、議会や首相個人のルールとして公表されたものではありません。
「改ざん検知シール」かどうかは写真からは分かりません。はがすと跡が残るタイプのシールなのか、ふつうのテープなのかは、写真の解像度では見分けられません。プライバシー保護のツールを紹介するコミュニティ、Privacy Guidesのフォーラムでも、シールが透けて見えるのではないか、マイクはふさいでいないのではないか、といった意見が出ていて、見方は分かれています。
AIのGrokの説明にも根拠は示されていません。Xでは、同じような写真について、Grokが「改ざん検知シールで、標準的なセキュリティ手順だ」と答えた返信も広まりました。ただ、Grokはその根拠となる公式な資料を示しておらず、内容は上のThe Tabの説明とほぼ同じです。
ほかにも、写真のスマホが首相の私物なのか公務用なのか、どんな機種で、どんな安全対策がされた端末なのかは分かっていません。
カメラをふさいでもマイクと位置情報とメッセージは守れない
ふつうのスマホ利用者がまねをする場合に知っておきたいのは、カメラをふさいで防げるのは「撮影」だけだということです。
カメラにシールを貼れば、レンズに映る景色が撮られることはなくなります。一方で、もしスマホそのものが乗っ取られていれば、マイクで周りの音を拾われることや、位置情報、メッセージ、写真フォルダの中身を読まれることは、シールでは防げません。Okazが伝えたマアリブの説明が正しいとしても、テープで守れるのはそのうちカメラの部分だけです。
カメラやマイクがいま使われているかは、スマホの画面で確かめられます。Appleによると、iPhoneでは画面上部に緑の点が出ていればアプリがカメラ(またはカメラとマイク)を使っていて、オレンジの点が出ていればマイクを使っています。Googleによると、Androidでもアプリがカメラかマイクを使っていると画面の右上に緑のインジケーターが出て、Android 12以降の一部の機種ではクイック設定からカメラとマイクへのアクセスをまとめてオフにできます。
身に覚えのないときに緑やオレンジの点が出ていないかを気にかけておくこと、使っていないアプリにカメラやマイクの許可を与えたままにしないことが、シールを貼るより先にできる対策です。写真や位置の情報が思わぬ形で外に出る例としては、ランニングアプリの公開記録から軍の拠点の場所が分かってしまったStravaの件もあります。
まとめ
ネタニヤフ首相がスマホのカメラをふさいでいる理由について、報道からは「機密に関わる場所での撮影を防ぐため」と「ハッキングでカメラを勝手に起動されるのを防ぐため」の2つが有力とみられます。ただ、イスラエル政府や首相府の公式な説明はなく、「議会の標準手順」「改ざん検知シール」といった説明も裏付けは見つかっていません。
スマホのカメラにシールを貼ること自体は、撮影を防ぐ方法としては確実です。ただし、守れるのはカメラだけで、マイクや位置情報、メッセージは別の対策が必要です。気になる人は、まず画面の緑とオレンジの点と、アプリごとのカメラ・マイクの許可を確かめてみてください。
Source: Jordan News(Tape on Netanyahu’s Phone Sparks Debate Over Digital Security)/The Tab(Political leaders cover their phone cameras with tape)/Okaz/Privacy Guides フォーラム/Appleサポート iPhoneのステータスバーに表示されるオレンジと緑の点について/Androidヘルプ Android でカメラまたはマイクのオン / オフ状態を確認する/The Father(@_FIRE_STICK_)のポスト
画像:Unsplash
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