Googleが自治体のAI活用9事例を公開|東大松尾研と開発 京都の旅程AI・広島の食生活診断・福井の商談練習AI

AI・生成AI

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青空を背景にビル屋上に設置されたカラフルなGoogleのロゴ看板

Googleは2026年9月29日、東京大学 松尾・岩澤研究室(以下、松尾研究室)と全国の自治体で進めている「ローカル AI プロジェクト」の事例をまとめたウェブサイトを公開しました。神奈川県や京都府、広島県など9自治体で開発・実証してきた生成AIの使い道と、自治体職員向けの無償デジタルスキルトレーニングの受け方が、1つのサイトで見られるようになりました。

この取り組みは2024年6月にGoogleが発表したもので、地域の課題を解決するための生成AIのプロトタイプ開発と実証実験を、自治体と一緒に進めてきました。2026年9月時点で対話を重ねた自治体は40を超え、雇用や健康、福祉、サステナビリティ、行政の効率化など、テーマは多岐にわたります。国や大学、企業が無料で公開しているAIの学習教材は生成AI・PCスキルを無料で学ぶ教材まとめで整理しています。

9自治体の事例は観光・健康・学び直し・住民サービス・地域産業まで

ブログで紹介された事例を一覧にしました。すでに実装されたものと、まだ開発や実証の途中にあるものが混ざっているため、「段階」の列にGoogleのブログでの書き方を添えています。

自治体 作ったもの 分野 段階
神奈川県 SDGsパートナー企業のマッチングAI サステナビリティ・産業 プロトタイプを導入
京都府 生涯学習サイト「KYO育tv.」のAIコンシェルジュ 教育・キャリア 実装済み
広島県 食生活タイプ診断ツール 健康・食生活 開発中
北海道南富良野町 SNSと連携したAI観光チャット 観光 開発中
島根県美郷町 町公式ホームページの対話型AI 住民サービス プロトタイプを構築
大分県 県ホームページのAIチャットボット 住民サービス 実証研究を実施
山口県 企業のDX相談を支えるコンサル支援AI 産業 プロトタイプを開発
福井県 商談練習用のAI顧客シミュレーター 産業DX プロトタイプを構築
京都府 王道と穴場の2案を出す旅程生成AI 観光DX プロトタイプを構築

神奈川県:SDGsパートナー企業どうしをAIが組み合わせる

神奈川県は、SDGsに取り組む企業どうしを結びつける「神奈川 SDGs パートナー制度」を運営しています。これまで県職員が手作業で行っていたマッチングにAIのプロトタイプを取り入れ、AIが企業の強みやニーズを分析して、相性のよい企業や、人では気づきにくい異業種の組み合わせを提案できるようになりました。ブログでは、マッチングの質の向上と職員の負担軽減を両立させているとしています。上の動画(約2分22秒)で、実際の取り組みの様子を見られます。

京都府:「KYO育tv.」のAIコンシェルジュが学び直しの講座を提案

京都府の生涯学習サイト「KYO育tv.」の画面。右下にGeminiを活用したAIコンシェルジュの対話ウィンドウが開いている

京都府の生涯学習サイト「KYO育tv.」には、Geminiを活用したAIコンシェルジュが実装されました。府民は24時間いつでも対話形式で相談でき、年齢や興味、目的に合わせた学習プログラムを提案してもらえます。相談のハードルを下げ、キャリアアップや学び直し(リスキリング)を後押しするねらいです。

広島県:いくつかの質問に答えると食生活のタイプとアドバイスが出る

広島県が開発を進める生成AIを活用した食生活タイプ診断ツールのプロトタイプ画面。動物キャラクターの診断結果タイプが並ぶ

広島県は、県民の健康づくりや生活習慣病の予防に向けて、AIを使った食生活タイプ診断ツールのプロトタイプを開発しています。利用者がいくつかの質問に答えると、食生活や生活スタイルに応じた診断結果と、健康的な食生活へのアドバイスが表示されます。診断パターンごとのコンテンツ作りに生成AIを使うことで作成の負担を減らし、質の高い健康支援サービスの提供を目指しています。

北海道南富良野町:公式情報とXの投稿から観光の「今」を答える

北海道南富良野町のAI観光チャットのプロトタイプ画面。観光客の質問に、公式情報とXの投稿を参照して回答している

南富良野町では、町の公式観光情報に加えて、X(旧Twitter)や観光事業者の発信もAIが参照し、観光客の質問にチャットですぐ答えるプロトタイプを開発しています。Webサイトだけでは拾いきれない「今の情報」を届けることで、観光客の利便性を高め、町内をめぐってもらうことを目指しています。

島根県美郷町:町のホームページから答えと根拠のページを示す

島根県美郷町の町公式ホームページ画面。雲海の写真の下に「AIコンシェルジュ」のボタンが置かれている

美郷町は、町の公式ホームページから必要な情報を探しやすくするため、対話型AIと検索基盤のプロトタイプを構築しました。ふだんの言葉で質問すると、ホームページの情報をもとにAIが回答し、根拠となるページも示します。限られた職員体制の負担軽減と、住民サービスの向上の両面で期待されています。

大分県:FAQを大量に用意せずにホームページの情報で答えるチャットボット

大分県AIアシスタントの画面。住民向けサービスの質問に、県ホームページの参考ページを示しながら回答している

大分県は、県のホームページの情報量が増え、県民が探しにくくなることや、職員の問い合わせ対応の負担を減らすため、松尾研究室と共同でAIチャットボットの実証研究を行いました(松尾研究室が無料公開している講義資料は東大・松尾研のLLM講座の記事で紹介しています)。既存のホームページの情報を回答の材料にすることで、膨大なFAQを用意しなくても実用的な回答精度を確保できたとしています。

山口県:年間180件のDX相談に、似た事例や補助金をAIが探す

山口県のDX推進拠点Y-BASE向けコンサル支援ツールのプロトタイプ画面。企業ごとの相談案件が一覧で並ぶ

山口県のDX推進拠点「Y-BASE」は、年間180件にのぼる地域企業からのDX相談をすべて人手で対応しており、コンサルタントによって提案の質やスピードにばらつきが出ることが課題でした。そこで、過去の支援ナレッジを学習したAIが、似た事例や使える補助金をすぐに探し出し、面談時のヒアリングや提案を自動で作るコンサルタント支援のプロトタイプを開発しました。相談対応を早め、品質をそろえることを目指しています。

福井県:AIが取引先を演じ、若手がベテランの商談を練習する

福井県のAI顧客シミュレーターのプロトタイプ画面。AIが取引先の技術担当者を演じ、若手が声で商談を練習している

繊維や眼鏡など、高い技術力を持つ福井県のものづくり。一方で、その技術の価値を顧客の課題に合わせて提案する商談のノウハウは、ベテランの暗黙知になっていました。そこで、AIが取引先の顧客役を演じる顧客シミュレーターのプロトタイプを構築。若手が「技術を価値に変えて語る勘所」を実践の中で身につけ、次の世代へつないでいくための取り組みです。

京都府:「王道」と「穴場」の2つの旅程をチャットで同時に提案

京都府の旅程生成AIのプロトタイプ画面「京都旅行」。王道プランと穴場プランを提案する画面がスマートフォンに表示されている

京都市内の一部エリアに観光客が集中することが課題になるなか、京都府全域への周遊を促す対話型の旅程生成AIのプロトタイプが構築されました。旅行の日数や移動手段、好みをチャットで聞き取り、「定番の王道プラン」と「混雑を避ける穴場プラン」の2案を同時に提案します。特定エリアの混雑をやわらげ、府内各地への新しい人の流れを生み出すことを目指しています。

事例サイトでは自治体職員向けの無償トレーニングも案内

今回公開された事例サイト(Grow with Google)では、9自治体の事例に加えて、自治体職員や住民向けのデジタルスキルトレーニングもまとめて紹介しています。サイトによると、GoogleはAIやサイバーセキュリティなどのプログラムを、自治体やその職員、住民に無償で提供しています。

自治体職員を主な対象にしたものとしては、次のようなプログラムが掲載されています。

・AI Connect アカデミー:自治体・中央省庁など公共部門向け。公共部門の事例を題材に、実際のAIツールで課題解決に取り組む実践的なトレーニング(申し込みは問い合わせ)
・はじめてのデジタル変革(自治体編):自治体・公務員向けのオンデマンド動画プログラム
・はじめてのデジタルプロモーション(自治体編):自治体のデジタルプロモーションを学ぶオンデマンド動画プログラム

このほか、中小企業向けの「はじめての生成 AI 活用」、教育者向けの「Gemini アカデミー」なども並んでいます。個別開催を希望する場合は諸条件が発生する可能性があるとされているため、詳しくはサイトで確認してください。自治体からの相談や問い合わせも受け付けています。

自治体との対話から見えた3つのポイント

Googleは、多くの自治体と対話や開発を重ねるなかで、地域の課題解決にAIを役立てるための学びとして次の3点を挙げています。

1. 技術からではなく「地域の目指す姿」から考える
「AIで何ができるか」ではなく、「自分たちの地域がどうありたいか、何を解決したいか」を出発点にすること。切実な課題から逆算して初めて、AIは力を発揮するとしています。

2. 地域のデータと安全に連携する
ツールを配って終わりにせず、現場固有のデータと結びつけること。データ連携にはセキュリティへの配慮が欠かせないとしたうえで、Gemini Enterprise環境では入力データをAIモデルの学習に使用しないと説明しています。

3. 地域を深く理解する「人」がAIを使いこなす
外部から高度な専門家を連れてくることが必須なのではなく、現場の業務や住民の思いをいちばん知っている自治体職員自身がAIスキルを身につけることで、課題解決が大きく進むとしています。

まとめ

今回の9事例には、観光地のチャット案内や、自治体ホームページの「探しにくさ」を減らすAIなど、住民や旅行者が直接ふれる使い方が多く並んでいます。一方で、広島県の食生活診断や南富良野町の観光チャットは開発中、山口県・福井県の支援AIや京都府の旅程生成AIはプロトタイプの段階で、まだ形になりつつあるものも少なくありません。

自分の住む地域や、旅行で訪れる予定の地域の事例があれば、事例サイトや神奈川県の動画をのぞいてみると、行政のAI活用がどこまで進んでいるのかがイメージしやすくなります。自治体で働く人にとっては、無償のトレーニングを探す入り口としても使えるサイトです。

Source: Google Japan Blog

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